
モノクロのノスタルジックで時間が止まっているような、どこかそこだけがすっぽりと取り残されている雰囲気の写真と、シュールな内容の小説が、相乗効果をあげていますね。
三崎さん独特の雰囲気が出ていて、かなり面白かったです。4つ★~4つ★半
私が好きなのは「団地船」「彼の影」「ニュータウン」です。

「遊園地の幽霊」
元遊園地のあった場所に住む人は、それぞれ遊園地の夢を見るようだ・・。
「海に沈んだ町」
かつて自分が住んでいた家は、もう水の奥底に沈んでしまっている・・。
「団地船」

船の上に建っている団地が、一時とても人気だった。しかしその人気も今ではすっかり過去のものに。小学校時代に団地船に引っ越して行ってから、文通していた女の子は・・・
「四時八分」
その時間眠っていた人間は眠ったままに、起きていた人間は起きたままに・・・そしてその時からずっと年を取らない・・。
「彼の影」

影が勝手に動き出し、他の人間の影と入れ替わって・・。冬至で影は元通りになる。
「ペア」
ペアを解消しようと思い・・
「橋」
橋と付け替える事になったと役所から連絡が来る。
「巣箱」
巣箱が害虫状態の場所。黙って気が付かずにいると、どんどん増えていくので駆除しなければならない。
「ニュータウン」

段々廃墟化するニュータウン。子供が成長し、残るのは老人ばかり、段々ニュータウンが消えていく。最後のニュータウンを保存するために「生態保護」の監視下に置かれた光陽台ニュータウン。10年前のある日、住民には何も知らされないまま、突然周囲を鉄条網で覆われ、下界から孤立。そこには224人の人が暮らしているが、一番若い女性でも41歳だ。
そんなある日、監視員が5才位の少女を発見した。その子というのは、監視員と内部の女性との間にできた子供だった・・・。
★以下ネタバレ 白文字で書いています★
式典で住民が歌った歌。それは、住民が知り得るはずがない歌だった。それは、少数民族に興味がある大塚君が、少女を救う為に、最新のテレビ番組の録画を住民達に渡していたからであった。その騒ぎのために、少女の存在は、うやむやになった。彼のたくらみは成功したのだった。以上
海に沈んだ町 三崎亜記 白石ちえこ / 2011-01
「鼓笛隊の襲来」「となり町戦争」
写真と文章が見事にシンクロしてましたね。
不思議な設定なのに、そういうのもアリかもしれないと思わせてくれる三崎さんって、スゴイなぁっていつも思ってます。
このカメラマンの人は、この本を読むまで知らなかったのですが、三崎さんの書く小説と、ほんとうにピッタリ来る写真を撮る方だなぁ~って思いました。(とはいえ、色々な写真を撮る事が出来るけれども、たまたま、この本に合う様な写真を今回撮っただけなのかもしれませんが・・。)
ほんとですよね。不思議な設定ながらも、有りそうな気もするんですよね。身近なSFっていうか。そういう作風がとても面白いです。
三崎さんの独特の雰囲気を写真と小説で堪能しました。
今日は、すんごい暑かったですね・・・
有りそうで無さそうで、でも有りそうな、三崎ワールド。堪能させてもらえました。
今日みたいな暑い日に、こういう小説を読むと、クールダウン出来そうです。