堺雅人さん主演の映画を見てすぐ、図書館にリクエストしたものの大人気で、半年待って、やっと回って来て読めました。映画とリンクする部分もありましたが、映画と切り離しても、素晴らしく興味深い事が色々解る本でした。5つ★
まずは、江戸時代後半の武士が(この本の場合は、猪山家)何故これほど貧乏だったのか?というところが、解りやすく詳しく書かれていました。
その最大の理由として、「武士身分としての格式を保つための身分費用」として、親戚や仕事関係のつき合いでの、冠婚葬祭やら、手みやげ代や、何かのお祝いの席を立派に執り行う為に莫大な金がかかったからなんですね・・・。
それと、知らなかったのですが、家来や下女の方が、むしろお金が潤っていたというのには、ビックリ。
「直之は加賀百万石を担うエリート官僚で、草履取りを連れて外出する身分であった、しかし家来の草履取りの方がむしろふところは豊かであった。食事と衣服が保証されている上、小遣いももらっていたし、年3回のご祝儀があり、どこかにお使いに行く度に15文の現金収入があった。人前で土下座をし、つらい家事労働をしなければならなかったが。いかに主人が金を持っていないのかよく知っていたはず・・」と書かれていました。
また、江戸時代が平和と安定が長く続いた理由として、
外見からすれば武家は立派に見えるけれども経済的には泣いていたし、商人は金持ちだが卑しい職業とされていた。このように江戸時代は「圧倒的な勝ち組」を作らない様な社会だった。このような「地位非一貫性」の社会は革命が起きにくい。身分による不満や羨望が鬱積しにくい。という説にもなるほど~!と思いました。
また、明治維新後、権力を失った武士が、それぞれどんな風になっていったかというのも書かれていました。
成功した一部の者達は、海軍やら官員になり高給を得られたが、商売などをしたものの1年未満で失敗し、貧しい生活になって行った人たちもいたこと。
日本の大部分は「領主が領地に足を踏み入れない領主制」だったので、武士階級が簡単に経済的特権を失った秘密もそこにあるのかもしれない。現実の土地から切り離された領主権は弱いものであり、比較的容易に解体された。しかし武士の領主権が現実と結びついていた鹿児島藩などそうは行かず、西南戦争などの「士族反乱」を経験することになった事など、江戸時代~明治のころの様子なども解りやすく説明されていました。
また、当時の「家」についての様子も書かれており、いとこ同士の結婚が多く、またお試し期間というものがあった事。武家の娘が嫁いだ場合、初産は実家に戻り、2回目は自宅で、嫁いだら実家と縁が切れてしまうわけじゃなく、その後もなんだかんだと繋がり(金銭的にも)が続く事。
離婚率が非常に高く、そのため、別れる可能性も考え、夫婦の自己資金は別別になっていた事、借金は同じ身分の者、または親戚間で行う事が多く、一般的にこの時代は借金の利息が非常に高かったそうです。
江戸時代に何も家柄やらコネが無い場合、算術にたけているということで出世が出来た様に、維新後も算術や勉強で優秀な人間が海軍に入り出世するというコースを目指すために、幼い頃から勉強を叱咤激励する親も結構いたようですね。
その後の猪山家はというと、成之の子供3人と妹の子が海軍に入った。しかし末っ子は日露戦争の際、船の上で自害し、妹の子はシーメンス事件で賄賂容疑をかけられ投獄され、謎の死を遂げたりと悲しい事件も起こったそうです・・・。
他にも、東大の赤門は、旧加賀藩前田家の上屋敷で、将軍家斉の娘溶姫を妻に迎える時、婚礼に際して立てられたお祝いの品だったというのを初めて知りました。
映画で使われていたエピソードとしては、妻の出産の際、高価な砂糖を買ってあげたこと、父が息子にそろばんで頭をぶったことなどは実話だったんですね。
武士の家計簿 ―「加賀藩御算用者」の幕末維新 磯田 道史 / 2003-04-10
「金沢藩士猪山家文書」という武家文書に、精巧な「家計簿」が例を見ない完全な姿で遺されていた。国史研究史上、初めての発見と言ってよい。
新書を映画化するなんて素晴しい!と思いました
latifaさんの記事で映画のシーンが色々と思い出されました
(^_^)
砂糖の袋のエピソードが映画でも使われていたのはうれしかったです。その後、袋も無駄にせずに使うところがさすが御算用者と言った感じですね(^^)
私は、この本を読んで、いっきに磯田道史先生ファンになりました。どう考えても、マニアしか興味を持たなさそうな地方のお侍さん一族の記録から、こんなステキなストーリーを紡ぎ出せるってステキだなぁと思います。改めて、歴史を学ぶことの意味を教えられたような気がします。
映画は、原作とはちょっとコンセプトが違った仕上がりになっていましたが、でも、ホンワカしていて、それはそれで楽しめました。キャラにあった配役が絶妙だったなぁと思います。
それでは、また!
ほんと、新書の映画化っていうのは、あまりないパターンですよね。
私も滅多に新書は読まないので、半信半疑だったのですが、読んでびっくり。とっても面白くて、ためになる本でした。
そうでしたよね。日月さんちで、冬に金沢旅行の記事がアップされていましたよね。
この本を読むと、加賀藩に思い入れが深くなります。私も前から金沢には行ってみたいと思っていましたが、その思いがより一層深くなりました。
私もこの本を読んで、磯田道史先生の本を他にも是非読んでみたい!という気持ちになりました。
映画も本も、それぞれ楽しめました。
次に磯田さんの本は何から読もうかしら・・と今考え中です。
その大変だった生活習慣が伝統工芸や和菓子に引き継がれているのは大きな遺産ですね。
神奈川県からだと金沢は車にしろJRにしろ滋賀県米原市経由となり行きにくいかもしれませんが是非一度行かれては?と思います。
それだけに、ご紹介の映画と本は見てみたいですね。
>合掌造りの五箇山では火薬の原料が採取できたので
そうなんですか!合掌造りの建物は大好きなのに、火薬の原料が採取出来る場所であったことは、今日初めて知りました。
笹団子さんって、ほんとに博識ですね。
江戸時代の金沢、大都会だったんですね。小京都という名前もありますし。
そうなんですよ・・・神奈川からだと地図で見ると真上(北)に直線距離で考えると、そんなに遠く感じないのに、実際行くとなると、遠回りの経路しか無いのが残念です・・
読んだらここにきますね。
もしかしたらパソコンを修理に出すやもしれません。