
乙一さんの別名山白さん名義での短編集。
面白かったです。3つ★半~4つ★
8編の中「トランシーバー」だけは、「メアリー・スーを殺して 幻夢コレクション」乙一 (著)で既読でした。
以下、ネタバレで書いていますので注意です!
世界で一番、みじかい小説
夫婦そろって、最近男性の幽霊が見える。妻は冷静で、その男を観察し、似顔絵を描き、SNSで彼を知らないか?色々探す。
していたネクタイや、時計から、色々解って来たり、幽霊・謎解き・ぐっと来る処少し有り、と、一番これが私は面白かったです。
結局幽霊である男の身元が判明し、妻と会って話すことに。会合に選んだレストランで、彼を殺した店員の女性を突き止める。
引用されるヘミングウェイの「For sale:baby shoes,never worn.」(売ります、赤ちゃんの靴、未使用)が切なかった。
首なし鶏、夜をゆく
ネグレクトされている身なりで、クラスメートからいじめられている風子と友達になり、放課後には自宅にあげて遊ぶ様になる。
彼女は、首をはねられて、首が無くなっても動き回る鶏京太郎をペットにしていた。
しかし、彼女の行方が途絶える・・・。
叔母にいじめられていた風子は、やはり彼女の虐待で亡くなっていたんですね・・・ 泣
酩酊SF
バックトゥーザフューチャーで、結果が解っているスポーツの賭け事で大儲けする・・・というのを思い出せられます。
誰でも、こういう能力があれば、そんなよこしまな気持ちが芽生えてしまうというのも解る。
お酒を飲み酔いつぶれると、特別な才能を発揮できる彼女がいる後輩から、相談される主人公。
その後、大金を手に入れたらしい後輩。
しかし、彼が血を流し倒れているというシーンを見てしまったという彼女の予言に焦る後輩。
ここで出て来るのが最初の方に、ちょっとだけ登場していた、後輩にそっくりな大学の同級生。
なんと、彼を身代わりに殺してしまうとは・・・。
布団の中の宇宙
新しい小説が書けずにスランプに入り込んでいる主人公。
とある時、リサイクルショップで買った布団。その布団に入ると、色々な事が可能になり、
最後はそこで出会った女性を追い、どこかへ行方不明になってしまったっぽい。
子どもを沈める
学生時代に仲間と、とある女子をイジメていた。
その後年月は経ち、結婚し妊娠した彼女に届いたのは、あの時一緒にいじめていた仲間が、それぞれ、自分の産んだ子供を様々な理由で手をかけていたという恐ろしい事実だった。
自分も彼女らと同じになってしまうんじゃないかという恐怖。
生まれた子供は、イジメられて亡くなった女子の顔とそっくりなのだった。
でも、結局この主人公は、それを受け入れ、手をかけることなく、罪を忘れずに育てて行く覚悟が備わっているようでした・・・。
トランシーバー
震災で亡くなった幼き息子。一緒に遊んだそのおもちゃから、声が聞こえて来るのだった・・。
私の頭が正常であったなら
元夫が子供を道連れに無理心中してしまって、精神を病んでしまった主人公。
実家に戻り、なんとか少し散歩なども出来るようになってきたある日、どこからか、子供の声が聞こえてくるのだった。
幻聴なのか・・?と思いきや、瀕死の子供の声で、ギリギリのところで、その風呂場に閉じ込められていた子を救う事が出来たのだった。
おやすみなさい子どもたち
アナは、海で子供たちと一緒にいる時に落ちて死んでしまう。その死の瞬間、人生の走馬灯が見えるのだが、なんと他人のものだった。
どうも天使たちの手違いで、別人のフィルムが流れてしまったようだった。イザベルという天使がアナに付き添い、アナのフィルムを探しあてるも、アナには生まれた後にだれもが一人つくはずの守護天使が存在していないことなどが解る。
そして、どうやらアナは希少な地上堕ちしたらしい人から生まれたか、何かで、人間ではなく天使であるようだと解る。
アナはこの後、死の国に向かうか、それとも天使としてここで働くか、2つの選択があり、何よりもアナは、この後すぐに子供たちが次々と亡くなってしまうのを阻止しようと務めるのだった。
地上と、この国とでは時間の経過が全く違っており、地上の1秒が、こちらの何時間にもあたるのだ。
なんか、この話は、映画の「天国から来たチャンピオン」と「ベルリン天使の詩」を混ぜたような処があったな(^-^;
でも、子供たちの事を心配し、彼らを救おうとしたアナは、まさに天使って感じの心の綺麗な子だなーと思いました。
私の頭が正常であったなら 感想 山白 朝子
山白朝子
エムブリヲ奇譚
「死者のための音楽」感想
「メアリー・スーを殺して」
本のタイトルだけでどんな話なんだろうと惹かれました^^
どの作品も面白かったです。でも、中には救いようがないダークな作品もありましたね…山白さんらしい…。
私も「トランシーバー」だけ既読だったのですが、この作品が1番印象深いかもしれません。過程が読んでいて辛かったですが救いがあったので。
あとは表題作と、「おやすみなさい子どもたち」が好きでした。
山白さん(乙一さん)の本は、新刊が出るたびに、読まずにはおれません^^
本作も色々な味わいのお話があって、楽しませてもらいました。
ところで、「グレーテルのかまど」
苗坊さんも毎週見ているなんて^^
凄く美味しそうですよねー。
かまど、とのやり取りがとても楽しいです。
どの短編も誰かが殺されたり殺されそうになったりするのが怖いですね
特に子供がそうなる短編がいくつもあるのが恐ろしいです。
近年の私は誰かが酷い目に遭う小説を読むのは苦手になっています。
乙一さんの小説は別名義で書かれたのを1冊読んだことがあり、それは合唱コンクールを題材にした青春物語で読みやすかったです。
確かに、これって、殺人がらみが多いし、子供がそうなるのも多い・・
ブラック度が高いかもしれません。
そういう点で、昔の黒乙一作品に近いんだろうか・・・?
グロい描写はあまりないので、起きる出来事は酷いんだけど、若干マイルドに感じるだけで・・・
>近年の私は誰かが酷い目に遭う小説を読むのは苦手になっています。
私も、意地悪が過ぎたり、イジメとかの作品は、さけがちになっています。。。
あ、合唱コンクールのは、五島列島のやつかな? あれはほのぼのとして、良かったですね
乙一さんの作品、昔はブラック度が高かったのですね。
この作品がマイルドに感じるとあるので、昔の作品はもっとブラックなのかと驚きました
合唱コンクールのは五島列島のやつです
青春物語で楽しく読みました
そちらは雨でしょうか・・・
日本各地で水害の様子が流れ、心配です・・
そうですー、昔は、乙一さんの作品は、確か、黒乙一っていうのと、白乙一ってのがあって、黒はブラック度が凄いって事で知られていたはず・・・。
色々な名前で小説を書く様になられてからは、そういう話題は、めっきり聞かなくなったような・・・。
彼も年齢を重ね、子供さんが出来たりして、色々と変わられた処もあるのかもですね。
「布団の中の宇宙」が良かったです。スランプに陥っていた作家が、中古の布団から彼に触れてくるものからインスパイアされて、素晴らしい作品を書いた末に、行方不明になる。
実際に体験したいとは思えませんが、彼の書いた幻想的で美しい小説を読んでみたくなりました。
布団の中の世界へ旅立って行った彼は、とても幸せなのではないでしょうか。
布団の~、今でも印象に残っています。
結構すぐ小説って忘れてしまうのですが、これはアイディアというか、インパクトがあって面白かったです。
きっと、布団愛が乙一さんに溢れていて、そこから作られたお話なのかなーなんて思っています。