とある北海道の田舎の村、高校生の外村は、体育館にあるピアノを調律した板鳥さんの様子とピアノの響きに魅せられ、弟子にしてくださいと申し出る。
まずは2年間調律の専門学校に通い、その後は板鳥さんも務めている小さな会社に就職出来た。
そこで調律師として、優しい先輩や、ちょっと意地悪な事を言う先輩などに囲まれ、時に落ち込みながらも、日々頑張る。
調律先で出会った、高校生の双子の和音と由仁。初めて聞いた時から、大人しい姉の和音の弾くピアノにキラッと光るものを感じる。
しかし活発な由仁の方が、注目されがちで、かつ本番に強いことなどを知る。
実は外村にも2個下の弟がいて、誰からも愛される要領の良い弟がいて、つい何かと比べてしまい、時にそんな弟を恨む時もあったのだった。
★以下ネタバレ 白文字で書いています★
有る時、由仁がピアノを前にすると緊張からなのか、何なのか原因不明の精神的なもので、ピアノを弾けなくなってしまう。そして由仁はピアニストになる事を諦め、調律師になると将来の進路の方向を変えるのだった。かたや和音は以前より、一層ピアノの響きが素晴らしくなり、ピアニストとして頑張る決意を固くするのだった。 うーん、、、由仁がピアノを弾けなくなってしまった後の苦悩とか焦りとかが少な目だった気がしました。そして、悩んだ末の方向転換だったには違いないだろうけれど、、意外とアッサリ調律師になると決めた感じがして、そこが少々引っかかったかなあ・・・。
先輩調律師に、かつてピアニストを目指していたものの諦めた、時々意地悪な発言をする秋野さんの描写があっただけに(4年間も崖から飛び降りる夢を見て悩んだという・・)、由仁のそれが軽いと感じてしまったんですよね・・・。以上
森のある、寒そうな道東のどこかの村の様子などが、魅力的に描かれていました。
実際本州から、はるばる移住して暮らしてみたことのある宮下さんの経験から生み出されたものですね。
今まで「スコーレ」などで、仕事に対して自信はないけど、真面目に頑張る人を書いて来た宮下さんでしたが、今回は珍しく女性ではなく、男子主人公で描いた小説でした。
兄弟に対して小さい頃から、ちょっと劣等感を感じて育って来て、性格形成に影響した様子も、相変わらずとても上手です。
下手に恋愛話とかが、からんで来ないのも良かったなー。
将来的に、もしかしたら・・・って思う処もあったけれどもね^^
今回は、なんでだろうか?普段よりも、静謐な空気が漂っていて、ほんの少し小川洋子さんっぽいムードもあったかも(真似とかじゃなくて!)
大きなドラマが起きるわけじゃないけれど、とても丁寧に主人公の成長を追っていて、好感の持てる作品でした。
でも、凄い何かガツンと来るって程じゃなかったので、4つ★~4つ★半未満。
実は私は若い時、大手ピアノ店で働いていたことがあって、数人の調律師さん達とも交流がありました。
そのため、とても懐かしく、また馴染み深く感じる題材でした。
私の働いていた会社も、やっぱりピアノ販売、ピアノの音楽教室、楽譜やら音楽雑貨販売、調律師さん派遣など、色々な事をしていました。
調律師さんは、調律だけやっているって人もいたし、営業と調律、事務仕事と調律って感じで2足のわらじの人もいました。
こういうお店には、かつてピアニストを目指したけど諦めたという人も数人いたけれど、意地悪なことを言う人はおらんかったな(^^ゞ
また、今後も宮下作品を楽しみにしています。
羊と鋼の森 宮下奈都 2015/9/11
「ふたつのしるし」
たったそれだけ
終わらない歌
つむじダブル
誰かが足りない
メロディ・フェア
「田舎の紳士服店のモデルの妻」
「太陽のパスタ、豆のスープ」
よろこびの歌
宮下奈都「新しい星」、恒川光太郎「夜行の冬」
「遠くの声に耳を澄ませて」
「スコーレNO.4」ネタバレ感想
苗坊さんは、凄い読書ブロガーさんですよね!
いつも先輩?先生のような気持でお邪魔させてもらっているサイトさんです^^
ほんとですね、不器用な人が、好きな事柄に向かって、真っすぐに精進していく姿、とても読んでいて気持ちの良い小説でしたよね。
TBも送ったのですが・・・、反映されていると良いです・・・。
また、これを機によろしくお願い致します
苗坊さんのレビューから、こちらにお邪魔しました。
外村くんがこつこつと成長していく姿が清々しく、とても気持ちが真っ直ぐになる物語でした。
「好き」なものに対して、丁寧に生きることの美しさを余すところなく描いていて、とてもよかったです。
そういえば、宮下作品に音楽は結構出て来ますね。
以前読んだ本で、ブルーハーツが重要なキーワードとして登場していて、私も好きなアーティストさんだけど、詳しくはなかったので、知っていたらもっと楽しめたのになぁーと残念に思ったものでした。
でも、この小説は、ピアノの事や調律に関して、知らなくても知っていても、関係なく楽しめる内容でしたよね。
そうなんです。ピアノは結構長く続けていましたが、やっぱり途中で自分の才能の無さを自覚して行き(^^ゞ その道でやって行くのは、早々に諦めました。(あ、恐れ多いピアニストとかじゃなくて、私の場合は、ピアノの先生とか、音大に進むという選択肢を諦めたって事です)
大手ピアノの会社で働いたのは、ピアノを弾く仕事では全くなくて、ショールームでした。
>双子の由仁の件は、意地悪な先輩調律師との対比かなとも思いました。
ショックでひねくれた性格になる人もいれば、由仁のように上手く気持ちを切り替えられる人もいるという感じで。
なるほどー!!
そうかもしれません!気がつかなかったー。
宮下さんの作品の中で一番静謐かも知れません。
この雰囲気は良いと思います
そしてlatifaさんは大手ピアノ店で働いていたのですか!
となると、音楽がよく扱われる宮下さんの作品はかなり興味を惹かれそうですね^^
この作品で宮下さんの家にもピアノがあると知り、やはりかと思いました。
すごく音楽と縁のある人だろうなと思っていました。
双子の由仁の件は、意地悪な先輩調律師との対比かなとも思いました。
ショックでひねくれた性格になる人もいれば、由仁のように上手く気持ちを切り替えられる人もいるという感じで。
双子のその後はかなり気になるので、「よろこびの歌」→「おわらない歌」のように、いつか続編が出てくれたら良いなと思います
調律師って、あまり普段ピアノをよく弾かれる方以外は、接点がない職業ですもんね。
私の知っている人達も、2年間だか、専門学校に通ったと言っていました。生徒さんの数は結構少なかったようです(40年くらい前の事なので、現在のことは良く解らないです)
宮下作品には、今回の外村君みたいなコツコツ真面目なタイプが主人公の事が多いので、読んでいてイライラしないんですよ。
是非初期の作品も
調律師という仕事は、私は身近に感じたことはなかったのでこの仕事を知ることが出来て良かったと思います。
外村君の一生懸命に取り組む姿は本当に素晴らしいですよね。頑張れって応援したくなります。
そして好きになものは好きでいて良いんだって思わせてくれた気がします。
宮下さんの初期の作品は未読のものも多いので機会があれば読みたいです。