リートリンの覚書

日本書紀 巻第十六 小泊瀬稚鷦鷯天皇 三 ・太子、真実を知る ・鮪、殺される ・影媛の悲しみ



日本書紀 巻第十六 小泊瀬稚鷦鷯天皇 三

・太子、真実を知る
・鮪、殺される
・影媛の悲しみ



太子は、
はじめて鮪(しび)が
以前に影媛を得ていることを知りました。

悉く父子の敬いの無い状(かたち)を
覚(さと)り、

赫然(かくぜん)して、
大いに怒りました。

この夜。
速やかに
大伴金村連(おおとものかなむらのむらじ)
の宅に向かい、
兵を集めて計策(けいさく)しました。

大伴連は、
数千の兵をひきい、
路をふさぎ、

鮪臣(しびのおみ)を乃楽山(ならやま)で
戮(ころ)しました。

(一本は云う、鮪は影媛の舎に宿り、夜に戮されたと)

この時、遂に、
影媛は戮れる処におって行き、
すでに戮されたのを見ました。

驚き惶(おそ)れて、
こころまどい、
悲しみの涙が目にあふれました。

遂に歌を作って、

石上(いそのかみ) 
布留(ふる)を過ぎ
薦枕(こもまくら)の
高橋を過ぎ
物の多い 
大宅(おおやけ)を過ぎ
春日(はるひ)の 
春日(かすが)を過ぎ
妻(つま)隠(ごも)る 
小佐保(おさほ)を過ぎ
玉笥(たまけ)には 
飯(いい)さえ盛り
玉盌(たまもい)には 
水(みず)さえ盛り
泣き濡れていく 
影媛あはれ

ここにおいて、
影媛は、
収め、埋めるのが既に終わり、
家に還ろうとして、

悲しみ咽びて、
「苦しいかな。
今日、我が愛する夫を失った」
といいました。

涙がこぼれおち、
いたみを、
心に纒うまま歌いました。

青丹(あお)によし
乃楽山(なら)の谷間に
鹿ではないが
水に漬かる辺(へ)で隠(こも)り
水が灌ぐ 
鮪(しび)の若子(わくご)を
漁(あさり)出すな 猪よ



・赫然(かくぜん)
1・突如、いきなり2・ひどく怒るようす。烈火のごとく
・計策(けいさく)
計略。はかりごと
・石上(いそのかみ) 
天理市石上
・布留(ふる)
天理市布留
・高橋
奈良市杏町高橋
・大宅(おおやけ)
奈良市白毫寺
・小佐保(おさほ)
奈良市佐保川町



(感想)

前回までのお話は、
太子は、物部麁鹿火大連(もののべのあらかびのおおむらじ)の娘・影媛(かげひめ)を迎え入れようと思い、媒人(なかだち)を遣わし、会う約束をしました。
しかし、影媛はすでに鮪臣(しびのおみ)に犯されていました。
それを知らない太子は、約束の場所に行き、影媛にあいました。影媛の気を引こうとする太子。しかし、鮪臣(しびのおみ)が二人の間に立ち、二人は引き離されてしまいました。
ここで、太子と鮪臣は歌を詠み合います。
そこで、真実を知った太子は…

この時、
太子は、
初めて鮪臣がすでに影媛を
得ていることを知りました。

悉く父子の無礼な仕打ちを覚(さと)り、

烈火のごとく、
大いに怒りました。

この夜。
速やかに大伴金村連の宅に向かい、
兵を集めて計略しました。

大伴連は、
数千の兵を率い、
路を塞ぎ、

鮪臣を乃楽山で殺しました。

(ある文では云う、鮪は影媛の舎に泊まり、夜に殺されたと)

この時、
影媛は殺される処に追って行き、
すでに鮪臣が殺されているのを見ました。

驚き惶(おそ)れて、
心惑い、
悲しみの涙が目にあふれました。

遂に歌を作って、

石上 布留を過ぎ
薦枕の 高橋を過ぎ
物の多い 大宅を過ぎ
春日の春日を過ぎ
妻隠る 小佐保を過ぎ

立派な食器には 飯(いい)さえ盛り
美しい椀には 水(みず)さえ盛り
泣き濡れていく 影媛あはれ

ここにおいて、
影媛は、鮪の屍を収め、
埋葬が全て終わり、
家に還ろうとして、

悲しみ咽びて、
「苦しいかな。
今日、我が愛する夫を失った」
といいました。

涙がこぼれ落ち、
痛みを、心に纏うまま歌いました。

青丹によし
乃楽山の谷間に
鹿ではないが鹿のように
水に漬かる辺で隠り
水が灌ぐ 
鮪の若子の死骸を
あさり出すな 猪よ


結局
影媛は鮪臣が好きだったの?
なら最初から
太子の申し込みを断れば良かったのに…

なんだかな。

さて、
無礼な平群臣親子に
耐えていた太子。

とうとうぶち切れました。

今後はいかに。

明日に続きます。

読んで頂き
ありがとうございました。


ランキングに参加中!励みになります。
ポチッとお願いします。

にほんブログ村 歴史ブログ 神話・伝説へ  

ランキングに参加中。クリックして応援お願いします!

最近の「日本書紀・現代語訳」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事