リートリンの覚書

日本書紀 巻第十六 小泊瀬稚鷦鷯天皇 二 ・影媛との逢瀬 ・立ちはだかる鮪臣 ・歌



日本書紀 巻第十六 小泊瀬稚鷦鷯天皇 二

・影媛との逢瀬
・立ちはだかる鮪臣
・歌



約束の処へいき、
歌場(うたがき)の衆に立ち、

(歌場、これは宇多我岐(うたがき)といいます)

影媛の袖を執り、
躑躅(たちやすらい)して、
気をひきました。

俄に、
鮪臣(しびのおみ)が来て、
太子を排(おしの)けて、
影媛の間に立ちました。

これによりて、
太子は影媛の袖を放してしまいました。

移り廻ると、
前に向き、
立って直に鮪と当たり、歌いました。

潮瀬(しおせ)の 
波折(なおり)を見ると、
遊びくる 
鮪(しび)のかたわらに
妻が立っているのが見える

(一本は、潮の瀬を水門(みなと)にかえています)

鮪が、答えて歌いました。

臣(おみ)の子が
八重や韓垣(からがき)を
ゆるせというのか 御子よ

太子が歌いました。

大太刀(おおたち)を
腰に垂らし
身に着けて立っているが
抜かなくとも
のちのちなしとげて
会おうと思う

鮪臣が答えて歌いました。

大君の 
八重の組垣を
結いたいだろうが
汝は編めないのだから
結うことのない組み垣だ

太子が歌いました。

臣の子の
八節(やふし)の柴垣だが
地下が鳴動して 地震が来たなら
破れてしまう柴垣だ

(一本は、八節の柴垣を八重の韓垣にかえています)

太子は、影媛に歌を贈りました

琴頭(ことがみ)に
来ている影媛は
玉にたとえるなら
吾が欲しい玉である
鰒(あわび)の真珠だ

鮪臣が、
影媛のために答えて歌いました。

大君の 御帯の倭文織(しつおり)
結び垂れ
誰人(タレ)とも 
相思ったりしないのに



歌場(うたがき)
=歌垣(うたがき)
古代日本における歌垣は、特定の日時と場所に老若男女が集会し、共同飲食しながら歌を掛け合う呪的信仰に立つ行事であり、互いに求愛歌を掛け合いながら、対になり恋愛関係になるとされる。
・躑躅(たちやすらい)
たちどまったり、ためらったり
・波折(なおりと)
波が幾重(いくえ)にも重なって寄せてくるこ



(感想)
前回のお話の続きです。

太子は、物部麁鹿火大連(もののべのあらかびのおおむらじ)の娘・影媛(かげひめ)を迎え入れようと思い、媒人(なかだち)を遣わし、会う約束をしました。
しかし、影媛はすでに鮪臣(しびのおみ)に犯されていて…


約束の場所へ行き、
うたがきの衆の中に立ち、

影媛の袖をとり、
たちどまったり、
ためらったりして、
気をひきました。

しかしにわかに、
鮪臣が来て、
太子を押しのけると、
影媛との間に立ちました。

これによりて、
太子は影媛の袖を放してしまいました。

太子は、移り廻ると、
正面を向き、立って真っ直ぐ鮪とはりあい
歌いました。

潮の流れている早瀬の波が
幾重(いくえ)にも重なって
寄せてくるのを見ると、
泳いでくる 
鮪(しび)のかたわらに
私の妻が立っているのが見える

(ある文では、潮の瀬を水門(みなと)にかえています)

鮪(しび)が、答えて歌いました。

臣の子・鮪の
幾重にも重なった立派な垣根の中に
入ることを許せと言うのか 
御子よ

太子が歌いました。

大太刀(おおたち)を
腰に垂らし身に着けて立っているが
抜かなくとも
将来、なしとげて
影媛と会おうと思う

鮪臣が答えて歌いました。

大君は、
影媛を囲う立派な垣根作りたいだろうが
あなたには編めないのだから
作ることのない垣根だ

太子が歌いました。

臣の子の鮪の
垣根は見かけは立派だが
地震に揺られれば
すぐに破れてしまう柴垣だ

ある文では、八節の柴垣を八重の韓垣にかえています)

太子は、
影媛に歌を贈りました

琴の音色に誘われて、
来ている影媛は、
宝石に例えるなら
吾が欲しい宝石である
鰒(あわび)の真珠のようだ

鮪臣が、
影媛のために答えて歌いました。

大君の 
帯の倭文織を結ぶ紐が垂れているように…
誰のことも思っていない…

影媛は鮪のことだけを思っているでしょう

読んでみますと…
肝心のヒロイン・影媛の気持ちが
サッパリわからない?

どっちが好きなの?

そして、鮪臣。
歌だけみると、
かなり失礼な人物だな。

しかし、
平群臣親子。

どうしてそこまで、
武烈天皇を舐めているのか?

謎?

明日に続きます。

読んで頂き
ありがとうございました。


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