日本書紀 巻第二十 渟中倉太珠敷天皇 十五
・日羅の提案
また、
阿倍目臣
(あへのめのおみ)、
物部贄子連
(もののべのにへこのむらじ)、
大伴糠手子連
(おおとものあらてこのむらじ)を遣わし、
国の政のことを
日羅(にちら)に問いました。
日羅が答えて、
「天皇が天下を治める政は、
須(すべか)らく、
黎民(おおみたから)を
護養(ごよう)すべきです。
これが要となります。
何故、
にわかに兵を興し、
翻(ひるがえ)し、
失い滅びようとするのでしょうか。
故に、
今、合議(ごうぎ)すべきは、
朝の列で仕え奉る臣、連、二つの造から、
(二造とは、国造、伴造のことです)
下は、
百姓に及ぶまで、
悉く、
皆、饒富(じょうふ)となり、
乏しいところがないようにさせることです。
このようにして、三年。
食を足し、
兵を足し、
悦びをもって民を使い、
水火を憚(はばか)らず、
同じく国難を恤(あわ)れみます。
然るが後、
多く船舶を造り、
津ごとに列置(れっち)し、
客人に観させて、
恐懼(きょうく)を生じさせます。
これすなわち、
能ある使をもって、
百済に使わせ、
その国王を召すのです。
もし、
来なければ、
その
太佐平(だいさへい)、
王子(せしむ)等を召して、
来させるのです。
即、
自然に、
欽(つつし)み伏す心が生じるでしょう。
後に、
罪を問うべきです」
といいました。
また、
奏言して、
「百済人が謀り、
『船が三百ある。筑紫を請おうと思う』
といってきます。
もし、
その実に請うたなら、
陽(いつわ)り、
ゆるし賜るのがいいでしょう。
然らば、
百済は、
新たに国を造ろうと欲し、
必ず、
先に女人(めのこ)、
小小(わらわ)を船に載せて、
至ることでしょう。
国家は、
この時を望み、
壹伎(いき)、
對島(つしま)に多く伏兵を置き、
至るのをまち、
殺してください。
かえってだまされてはなりません。
いつも、
要害の所に堅く壘塞(そこ)を
築いてください」
といいました。
・黎民(おおみたから)
=れいみん・一般人民。庶民。万民
・護養(ごよう)
保護養育する
・合議(ごうぎ)
2人以上の者が集まって相談しること
・饒富(じょうふ)
富んでいること。財産が多いこと。富饒
・列置(れっち)
並べて置くこと
・恐懼(きょうく)
おそれ、かしこまること
・太佐平(だいさへい)
百済の最高執政官
・壘塞(そこ)
=るいさい・城塞
(感想)
(敏達天皇12年)
また、
阿倍目臣、物部贄子連、
大伴糠手子連を遣わし、
国の政のことを日羅に問いました。
日羅が答えて、
「天皇が天下を治める政治は、
当然、
人民を保護し養育すべきです。
これが要となります。
何故、
にわかに兵を興し、
かえって、
失い滅びようとするのでしょうか。
こういうわけで、
今、
合議すべきは、
朝廷の列で仕え奉る
臣、連、二つの造から、
下は、
百姓に及ぶまで、
悉く、皆、
富んでいる状態にし、
乏しいところがないようにさせることです。
このようにして、
三年。
食を足し、
兵を足し、
悦びをもって民を使い、
水火をさしひかえ、
おそれることなく、
同じく国難を憐れみましょう。
そのようにしてから、
多く船舶を造り、
港ごとに並べて置き、
外国の客人に観させて、
おそれ、かしこまる心を生じさせます。
これすなわち、
能ある使者を、
百済に使わせ、
その国王を召すのです。
もし、
来なければ、
その百済の最高執政官、
王子らを召して、
来させるのです。
すぐに、
自然に謹み伏す心が生じるでしょう。
後に、
罪を問うべきです」
といいました。
また、奏言して、
「百済人が謀り、
『船が三百ある。筑紫を請おうと思う』
といってきます。
もし、
実際に請求してきたなら、
偽って、
許し与えるのがいいでしょう。
そうすれば、
百済は新たに国を造ろうと思い、
必ずや、
先に女人(めのこ)、
小小(わらわ)を船に載せて、
やって来ることでしょう。
国家は、
この時を望み、
壱岐、対馬に
多く伏兵を置き、
到着するのを待って、
殺してください。
返って騙されてはなりません。
いつも、
要害の所に堅く城塞を築いてください」
といいました。
日羅の策。
前半の
国を繁栄させ、
それを見させて、
相手に恐懼の念を起こさせる。
戦わずして勝つのは、
いい策であると思いましたが、
後半の策、
新しい国を作ろうとやってくる
女、子らを
待ち伏せし、殺すとは…
いきらなんでも
酷くね。
日本は、
正々堂々としていて欲しい。
と思うのは私だけでしょうか。
明日に続きます。
読んで頂き
ありがとうございました。
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