日本書紀 巻第十九 天国排開広庭天皇 六十
・紀男麻呂宿禰の令
この月、
大将軍(おおいくさのきみ)の
紀男麻呂宿禰(きのおまろのすくね)
を遣わして、
兵をひきいて哆唎(たり)より出ました。
副将・河辺臣瓊缶(かわへのおみにへ)は、
居曽山(こそむれ)より出て、
新羅が任那を攻める状(かたち)を
問おうと思いました。
遂に、
任那に到って、
薦集部首登弭(こもつめべのおびととみ)
をもって、
百済に遣わし、
軍の計りごとを約束しました。
登弭は、
よって妻の家に宿りました。
印書(しるしのふみ)、
弓箭を路に落としました。
新羅は、
具に軍計を知り、
にわかに大いに兵を起こして、
ついに敗れつづき亡びて、
降り帰し、
したがうと乞いました。
紀男麻呂宿禰(きのおまろのすくね)は、
勝ち取り、
軍を旋(めぐ)らせ、
百済の営(いほり)に入りました。
軍(いくさ)の中に令して、
「勝っても、
敗れることを忘れず、
安くとも、
必ず危を慮(おもんぱか)るのは、
古い善い教えである。
今、
いるところのさかいは、
豺狼(あた)と、
交接している。
軽々しく忘れて
変難(のちのわざわい)を
思わないでいいのだろうか。
ましてや、
平安の世でも、
刀剣を身から離さない。
おもうに、
君子の武備は、
解いてはならぬ。
よろしく、
深く警戒し
令を務めてとうとぶべきである」
といいました。
・印書(しるしのふみ)
封印した書
・豺狼(あた)
=さいろう・残酷で欲深い人。むごたらしいことをする人。
(感想)
(欽明天皇23年7月)
この月、
大将軍・紀男麻呂宿禰を派遣して、
兵を率いて哆唎より出発しました。
副将・河辺臣瓊缶は、
居曽山より出発して、
新羅が任那を攻める状況を
問おうと思いました。
そこで、
任那に到着して、
薦集部首登弭を百済に派遣して、
軍の計画を約束しました。
登弭は、
妻の家に宿りました。
封印した秘密文書と弓箭を
道に落としてしまいました。
新羅は、
詳細に軍計を知り、
すぐさま大勢の兵を起こしましたが、
しかし、
敗亡が続き、
ついに、
降伏し、帰化して、
従うと乞いました。
紀男麻呂宿禰は、
勝利して、
軍を旋回させ、
百済の陣営に入りました。
軍の中で命令して、
「勝っても、
敗れることを忘れてはならない。
安全となっても、
必ず危険を考慮するのは、
古い善い教えだ。
今、居るところの境界には、
残酷で欲深い人と交わり接している。
教えを軽々しく忘れて、
後の災いを思わないでいいのだろうか。
ましてや、
平安の世でも、
刀剣を身から離さない。
おもうに、
君子の武備は、
解いてはならない。
よろしく、
深く警戒し、
命令に務めて尊ぶべきである」
といいました。
明日に続きます。
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