古事記 上つ巻 現代語訳 五十三
古事記 上つ巻
国譲り
櫛八玉神
書き下し文
是の我が燧れる火は、高天原には、神産巣日御祖神の登陀流天の新巣の凝烟の八拳垂る摩弖焼き挙げ、地の下は、底津石根に焼き凝らして、栲縄の千尋縄打ち延へ、釣為し海女の、口大の尾翼鱸佐和佐和邇控き依せ騰げて、打竹の登遠遠登遠遠邇、天の真魚咋献る。といふ。故、建御雷神返り参上り、葦原中国を言向け和平しつる状を復奏す。
現代語訳
この我が燧れる火は、高天原の神産巣日御祖神(かみむすびみおやのかみ)、登陀流(とだる)天の新巣(にいす)の凝烟(すす)が八拳(やつか)垂る摩弖(まで)焼(た)きあげ、地(つち)の下は、底津石根(そこついはね)まで焼(た)き凝(こ)らして、栲縄の(たくなわの)千尋縄 (ちひろなは) を打ち延し、釣する海人(あま)の、口大(くちおほ)の尾翼鱸(おはたすずき)佐和佐和邇(さわさわに)控(ひ)き依(よ)せ騰(あ)げて、打竹(うちたけ)の登遠遠登遠遠邇(とををとををに)、天の真魚(まな)咋(ひ)献る
といいました。
故に、建御雷神は、返り参上り、葦原中国を言向け和平した状(さま)を復奏しました。
・登陀流(とだる)
十分に足りる意か
・新巣(にいす)
新しい住居
・八拳(やつか)
こぶし八つ分の長さ。また、長さが長いこと
・底津石根(そこついはね)
地の底にある岩。地の底。下ついわね
・栲縄の(たくなわの)
長い栲縄の意から、「長き」「千尋 (ちひろ) 」にかかる枕詞
・千尋縄 (ちひろなは)
千尋縄(ちひろなわ)とは、現在の延縄の原形であると考えられている
・尾翼鱸(おはたすずき)
尾や鰭(ひれ)がぴんと張ったみごとなスズキ
・真魚(まな)
食用の魚を意味する
現代語訳(ゆる~っと訳)
この私が切り出した火は、
高天原の
神産巣日御祖神の立派な宮殿のように、
大国主神の宮殿も、
天の新宮殿でするように、
煤(すす)が長く垂れるまで、
焚き上げ、
大地の下は、
地の底にある岩まで焼き凝(こ)らして、
楮(こうぞ)の皮でより合わせた縄の、
千尋縄(ちひろなわ)を打ち延ばし、
・千尋縄 (ちひろなわ)
千尋縄(ちひろなわ)とは、現在の延縄の原形であると考えられている
延縄漁で釣する海人(あま)が
・延縄(はえなわ)
漁業に使われる漁具の一種
口の大きな、見事なスズキを、
ざわざわと引き寄せ上げて、
打つ竹がたわむほどに、
スズキをしとめて、
天の魚料理を献上いたします
と祝福の言葉をいいました。
こういうわけで、
建御雷神は、
天に返り、天津神のもとへ参上して、
葦原中国を平定した経緯を
報告しました。
続きます。
読んでいただき
ありがとうございました。
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