日本書紀 巻第二十七
天命開別天皇 十
・天智天皇3年の出来事 二
この月、
淡海国(おうみのくに)が、
「坂田郡(さかたのこおり)の人の
小竹田史身(しのだのふびとむ)の、
猪の槽の水の中に、
忽然と稲が生えました。
身はそれを取り、
収めました。
日々、
富に到りました。
栗太郡(くるもとのこおり)の人の
磐城村主殷(いわきのすぐりおお)の
新婦の床席(しきい)の頭の端に、
一宿の間に、稲が生えて穗がなりました。
その旦(あした)には、
頴(ほさき)が垂れて、
熟しました。
明日の夜には、
さらに一穗が生まれました。
新婦は庭に出ました。
兩箇(ふたつ)の鑰匙(さじ)が、
自ずと天から前に落ちて、
婦はそれを取って殷(おお)に与えました。
殷はそれから始めて
富を得ました」
といいました。
この歲、
対馬嶋(つしま)、
壱岐嶋(いきのしま)、
筑紫国(つくしのくに)等に、
防と烽を置きました。
また、
筑紫に大堤を築き、
貯水しました。
名は水城(みずき)といいます。
・淡海国(おうみのくに)
淡水湖の琵琶湖があるところから》旧国名の一。 現在の滋賀県にあたる
・坂田郡(さかたのこおり)
琵琶湖東岸の伊吹山の西南
・栗太郡(くるもとのこおり)
琵琶湖南岸の東の地域
・槽(そう)
家畜に飼料を与えるための食器。かいばおけ
・旦(あした)
朝、明け方
・頴(ほさき)
植物の穂先
・鑰匙(さじ)
やくし・鍵
・烽(すすみ)
=とぶひ・緊急時にのろしを上げて急を知らせる施設
(感想)
(天智天皇3年10月)
この月、
近江国が、
「坂田郡の人の小竹田史身の、
猪のかいばおけの水の中に、
急に稲が生えました。
身はそれを取り、
収めました。
日々、
富をなしました。
栗太郡の人の磐城村主殷の
新婦の床の頭端に、
一晩の間に、
稲が生えて穂がなりました。
その明け方には穂先が垂れて、
熟しました。
翌日の夜には、
さらに一穂が生まれました。
新婦は庭に出ると、
ふたつの鍵が、
自ずと天から前に落ちてきました。
婦はそれを取って
殷に与えました。
殷はそれから始めて富を得ました」
といいました。
この歲、
対馬嶋、壱岐嶋、筑紫国らに
防と烽を置きました。
また、
筑紫に大堤を築き、
貯水しました。
名は水城といいます。
読んでいただき、
ありがとうございました。
明日に続きます。
読んでいただきありがとう御座いました。
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