COVID-19の流行にともなって、美術作品の展示、映画の上映、音楽・演劇の公演とそれらの鑑賞がほとんどできなくなりました。私が住んでいる奈良の寺社もその多くが拝観停止となりました。こうしたことを「不要不急」として切り捨ててしまうことは、人間がよって立つところを掘り崩してしまうのではないかと気がかりになります。
絵を描いたり歌を歌ったりすることは人類が大昔から親しんできたことです。人類は4万年以上前に洞窟に動物の姿などを描いていました。歌うことが人間の言葉の起源であったという学説もあります。クラシック音楽の原点は教会音楽であったこと、仏像彫刻など仏教美術が日本の美術史において重要な位置を占めていることからも、芸術は人間の精神的なよりどころとして機能してきたことがわかります。
流行期間中は図書館での読書もできなくなりました。図書館は人びとがさまざまなことを学び、知ることができる場です。学ぶことは人類が築き上げてきた文化を受け継ぐ営みでもあります。「不要不急」とは言えないことです。
確かに今はオンラインで芸術作品を鑑賞したり、学習ができる環境が整いつつあります。それでもやはり、リアルな経験との落差は埋めきれないと思います。