僕は名もない凡人でいたい

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商店街の人たち

2014年12月27日 | 町で出会った不思議な人
皆さんは今日から冬休みかしら。
今年も1年お疲れ様でした(^^)
  ☆
服を取りにクリーニング屋さんに行った。
「ずいぶん預けっぱなしですみません」
と言うと、
「1か月くらいじゃ全然大丈夫よぉ。こっちの方の服なんか1年も取りにこないんだからぁ。あはは!」
おじさんが、ぶら下がっているコート類の方を指さし、歯のない口を大きく開けて笑った。
帰ろうとすると、わたしが背中にしょってるものを見てニコニコ。
「あらっ、それバイオリン? へぇ~そう。じゃあまたね!」
口調がオネェっぽいが、ちゃんと奥さんもいて夫婦2人で経営している。
服を預ける時はお客さんの顔を見て「え~と誰々さんね」と認知して電話番号も聞かない。
初めて利用した時からそうだったので、クリーニング屋さんはわたしの苗字以外の個人情報を一切知らない。
お店から電話がないので、忘れられた服たちは預けられたが最後、持ち主が自力で思い出すまでここでずっと待っている運命なのである。
服といえば先日、初めてリフォーム屋さんを利用した。
お店に入ると、ふわふわの髪の毛を紫色に染め、ふくよかで柔和な雰囲気のおばあさんがミシンの前に座っていた。
「コートのポケットと袖口を見てもらいたいのですが」
おばあさんはよっこらしょと椅子から立ち上がり、ゆっくりした動作で受付テーブルまで2~3歩歩き、紙とボールペンを手にした。
途端、手が滑ってボールペンが落ちてしまった。
「あらら……ちょっと、待ってね」
「だ、だいじょうぶですか」
「だい……だい、だいじょうぶよ……」
拾ってあげたいが、わたしからはボールペンが見えず手も届かない。
おばあさんはテーブルの下に転がったボールペンを見つけると、腰を曲げてうぐぐと腕を伸ばす。
ボールペン1本拾うのも難儀である。
「はい、袖口とポッケね」
紙に「袖口」「ポッケ」と書く。
ポッケと言ってそう書くのがなんだか可愛い。
こちらの名前と電話番号を書き込むと、仕上がり日と大体の値段を教えてくれた。
「それじゃ、お預かりしますのでね」
「あの、わたしの方の控えとかは……」
「ああ、大丈夫よ。こちらで覚えておくのでね」
そ、そうなんだ。大丈夫かな。大丈夫なんだよね。
わたしは、約20日後の仕上がり日と大体の値段を記憶して帰った。
家に帰るなり、すぐにカレンダーに書き込んだのは言うまでもない。
この町に住んで5年。
今日も商店街の普通の人たちの個性が光る。