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なかなか勝てない馬がいる。今日もその馬が走る。
がんばれ、と声が出る。
まなざしは、ゴールの先を見つめている。

湖畔  ~真壁仁~

2020年09月09日 14時33分00秒 | 真壁仁
蔵王歌集 氷の花より


湖畔に
つきみぐさの花が咲いていた
夜になると花は白く 星のあかりをともした
湯殿のどよめきはそこにとどかず
霧にまじって
硫黄の湯の香のみながれてきた

少女は語った
人生について
幸福について
愛について
そして
かすかな自活の煙に病を忘れようとつとめていた
少女は快活に笑った
山を仰いで・・・・・
あのこころに灯ったあかりは
つきみぐさの花より大きかろうか

午後になると山はくもり
霧のなかにかくれる
少女は
谷を埋めて雪降る日を待つという
めくりめく銀嶺
霧氷の珊瑚林 そして樹氷のマンモス
あの尾根 あのいただき極めたら
わが孤独はかがやくという

しかるに
山葡萄塾るる頃
少女は仆(たお)れた
そしてふたたび起たなかった
そのころ私は旅に在って
湖畔の夜のかたらいをおもい出し
アトサヌプリの麓から
ひとひらの手紙を書いた
そのたよりは誰の手にとどいただろう
つきみぐさの咲くころはそれをおもう


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