「地図展2015 首都東京1945」講演聴講に続き、展示を見に行きました。
米国国立公文書館所蔵、1945年米軍が撮影した貴重な空中写真を中心に約70点の展示です。
■「地図展2015 首都東京1945」
会 期:10月23日(金)~11月30日(月)まで
※展示解説ツアーあり→このたび(11/24)参加しました!
場 所:半蔵門線三越前駅(日本橋方面改札)と銀座線三越前駅(三越方面改札)の間の通路
費 用:無料
この日のツアーの解説は日本地図センター常務理事、田代博氏です。
田代博氏といえば、NHKの教育番組などでお馴染みの地理の先生で富士山の大家!
山岳展望に関する様々な事例を書籍にまとめられ、メディアでも活躍されています。
「ダイヤモンド富士」、「超望遠富士」などの解説を、私もテレビで拝見しました。
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ツアー内容のすべてを書き切れないので、 印象に残ったいくつかをご紹介。
<東京大空襲直前と空襲後の空中写真について>
東京大空襲前の1945年3月8日の空中写真と被災後の4月と5月に撮影した空中写真を
比べると、空襲で焼失した場所が白く広がっているのがわかる。
<首都東京大パノラマ 東京スカイツリー天望デッキより 樋口徹氏撮影 2013/1/11>
東京の新たな名所からの迫力の富士山ビューです。みんなが美しいと眺める富士山ですが
70年前焦土と化した光景で見た富士山を思い出し、つらい思いをされる方がいらっしゃるとのこと。
様々な思いで眺める富士山、戦時下には、マリアナ諸島からやってくるB29の飛行目標とも
なっていたとのことです。
<戦時改描図・・・機密保持のため軍事的に重要な土地・建物を意図的に改ざんした地図>
改描の対象になった土地、建物などの解説、改描図の特徴など(※)
<AMS(米陸軍地図局)被災地図・・・1945~46年に米陸軍地図局作成されたもの>ピンボケですいません(><)
このAMS被災地図をもとに、日本地図センターが戦災にあった地域をオレンジ色に色付けした地図で
オリジナルはグレーの薄い斜線で、判別しにくいためとのこと(※)。
AMS被災地図は米軍が作成した空中写真や日本が作成した地形図も使用して作られたもので
被災状況が最もよくわかる地図とのことです。
<建物疎開・・・火災の延焼防止のためある範囲の建物を取り壊し帯状の空き地を作ることをいう>
疎開といっても移動ではなく破壊、その様子が写真や地図で展示されている。
日本の木造家屋を効率よく燃やすために焼夷弾の研究実験、また日本の火災保険など
の資料も入手して、戦略を立てたという。
いくら戦時改描しても、米軍に偵察撮影されてたのだ。
克明にあらわにされる国土・・米軍撮影の空中写真を見ながら、なんだか虚しくなりました。
奇しくもツアー参加した昨日(11月24日)は東京への空襲が本格化する第一歩となった日とのことで
1944年11月24日は、B29が軍事工場「中島飛行機武蔵製作所」(現・武蔵野中央公園付近)を
爆撃し70人が犠牲になった日です。
戦後70年の節目の11月24日に米軍撮影の空中写真を中心にいくつもの当時の地図、資料を
見る事ができ、感慨深かったです。
まぁ、とにかく地図が大きい。
様々な地図が見られる。
当時の資料も豊富。
想像以上のボリュームのある地図展でした。
眺めていると涙がこぼれてきそうな地図もありました。
ふと地図は誰のものだろうと疑問がわいてきます。
合わせ鏡のように地図には社会の本質が写しだされるよう感じました。
悲しい過去は変えられないけれど
今よりも良い社会になるように地図が活用される、そんな時代になりますように。
よりよい未来へ子ども達にバトンタッチしていきたいものです。
・・・そんなことを思った帰り道でした。
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他にもいろいろ興味深いお話がありました。
※は、展示解説ツアーならではの深い内容でした。
地図描写について・・・今尾恵介氏の書籍より戦時改描図の見解の紹介
⇒戦時改描図では故意に粗略に描写されている、これは虚偽の地図作成を強要された技術者たちのせめてもの抵抗ではないか
という説があるように、AMS(米陸軍地図局)被災地図の描写についても恣意的にも見える描写は
大勢の一般市民を犠牲にした事実への反発を恐れ、あえて目立たないように描いたと推測もできるのでは・・とのお話でした。
※参考ページ:バーチャル地図展2015
今回購入した2冊。フェアー価格で購入できました♪
・アメリカにあった伊能大図とフランスの伊能中図 伊能忠敬研究会 (監修), アメリカ伊能大図展実行委員会 (編集), 日本国際地図学会
・1945・昭和20年米軍に撮影された日本 空中写真に遺された戦争と空襲の証言 一般財団法人日本地図センター (著)