50『美作の野は晴れて』第一部、秋の風物詩2(多様な食べ物)
秋には、多様な食べ物がある。私たちのでは必ずしも常食とはしていなかったが、ひろく美作他方を見渡すと、人々は、かねてから、あの茶色(ダーク・ブラウン)いゼリー状の「牛の煮こごり」を食べていたようだ。これに、「スジ」と「テール」と「アキレス」が三つ入っている。作り方は、醤油を調味料のベースに、これら3つの種類の牛の肉を鍋に入れて煮込むのであるが、順番があるらしい。2015年6月11日放送のテレビ(日本放送の番組「秘密の県民SHOW、岡山衝撃煮こごり&○○」)で、その「牛の煮こごり」が紹介されていた。その作り方は、なかなか手が込んでいて、これだけの手間暇をかけて作るものだから、昔も今も家庭で作るのは簡単ではなかろう。そこで、料理屋さんの説明では「スジとテールでうまみを引き出し、アキレスの方でコラーゲンとか固める役割をします」(津山市内の精肉店の人)とのことであった。
具体的には、「まずはずんどうにアキレス、そしてスジ肉を大量に入れます。弱火で10時間じっくりと煮詰め、圧力鍋で(12時間もかけて)くたくたに煮込んだテールをドッキングし、それに醤油、鷹の爪で味付けすれば、おいしそうな牛肉エキスたっぷりの濃厚スープの完成。そして型に入れ、一晩冷蔵庫で寝かせる。お肉のゼラチン質がしっかりと固まったところで、型から取り出せば、プルプルの業肉の煮こごりがお出まし」(ナレーター)とのこと。
津山の美作大学栄養学科の桑守教授によると、そもそも「津山市には牛肉を食べる習慣が昔からあった」といわれる。705年には、津山で牛の市が立っていたとのことであって、その頃から、牛を解体した後の「牛の肉をよく食べていましたので、主要な肉以外のホルモンなどが大量に余りました。内臓は津山名物のホルモンうどんに、動脈は塩こしょうなどで食べるメナカセという食材として使いました。残ったスジの部分なのですが、煮込むことでゼラチン質が多く出ることから、煮こごりとし食すようになったと考えられます」とのことだ。食べ方としては、これも暖かいご飯の上に載せて食べるが常道だとか、いやはや、私は実家で魚の煮こごりを食べていたときの食べ方と、おいしくいただく時の食べ方はさほど変わっていないので、この放送に接して、合点がいった。
(続く)
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