echo garden

基本的に読書感想文です。

ナルニア国物語 ライオンと魔女 8

2006-03-06 17:22:22 | Weblog
 5 ドアのこちらにまいもどって

 ルーシィはピーターとスーザンを見つけて、エドマンドの話を聞いてよ、とせきこんで言いました。
 しかしエドマンドは自分の見たことを言おうとして、急にむらむらと残酷な考えが湧き起こりました。
 「そう、僕とルーシィはたんすの向の別世界に行ったってふりをしようとしてたのさ、でもそんなありっこないごっこ遊び、馬鹿馬鹿しいだけさ。」
 ルーシィはエドマンドをふりかえって見るなり、駆け去っていきました。
 「まったく困ったな、小さい子はすぐあれだ・・・」
 「こら!」とピーターがかっとなって、エドマンドのほうにむいて、「だまれ!このまえルーシィが衣装だんすのおかしな話をしてからというもの、おまえはルーに随分ひどいじゃないか。いまもルーと、ごっこ遊びをしてるというのに、自分でかってにそれをほったらかしてしまう。僕にはおまえが意地悪でやったような気がするぞ」
 「ぼくは、ぼくは、ただ・・・」
 「今は兄弟喧嘩してるときじゃないわ」
 スーザンが二人をなだめ、その場は別れました。
 その夜、ピーターとスーザンは学者先生にルーシィのことを相談に行きました。
 「・・・それで、なぜ君たちはルーシィが嘘をついてると決めつけたのかね、」先生は真面目な顔で言いました。
 二人はまさかそんなことを言われるなんて思ってもみなかたのでびっくりしました。
 「君たちがよく知ってるようにルーシィは嘘をつく子じゃない、気が狂ったわけでもないのは様子をみてれば分る。だとすれば、ルーシィの言うことはそのまま本当だと思うべきじゃないか。」
 ピーターとスーザンはよくわからないまま、もうすこし様子を見ることじゃ、という先生の言葉に従うことにしました。
 それからしばらくして、この事件も風化しかけたある日の朝。
 家政婦のマクレディさんが4人に、きょうは大事なお客様がくるので、屋敷のなかをうろうろしないように、と注意しました。
 エドマンドは、まるで僕たちがわざわざちょっかいを出しに行くみたいじゃないか、とささやき、3人も同感でした。
 しかし、4人が物置部屋で古い絵のほこりをはらったり、鎧を分解してみようとしているときに、マクレディさんと数人のお客の話し声が近づいてきてあわてました。まさかこんなところに来るとは思いませんでした。
 反対の方向へにげると、そこは衣装だんそのある空部屋でした。ここでやりすごそう、と考えていると、ドアノブが回るのがみえました。
 4人は大慌てでたんすの中に逃げ込みました。
 
 

ナルニア国物語 ライオンと魔女 7

2006-03-06 02:08:47 | Weblog
 4 プリン

 「答えよ、そちは大きく育ちすぎた小人か」
 「ち、違います。女王様、僕は男の子です。」
 「男の子とな、ではアダムの息子か、」
 女のひとは席を立ってぴたりとエドマンドを見据えました。その目はかっと燃えました。そして同時に杖を振りました。エドマンドは何かおそろしいことが起こると思って身動きもできません。もうこれまでと観念した瞬間、女のひとは気持ちを変えたようでした。
 「おお、かわいそうに!」と女の人はがらりとちがう声音で、「まあ寒そうだこと!こちらへ来てそこにお座り。そうすれば、そちの体にこのマントをかけてとらそう。すこし話をしようではないか。」
 まあ、おいしいものでも食べながら話そうではないか、と言いながら、女王は小瓶をとりだしました。
 それを傾けて、一滴を雪の上にたらすと、雪はシューと煙を噴き上げて、なかからどっさりとプリンが現れました。
 エドマンドは一口食べると、今までに無いぐらい甘くておいしいので、二口食べるともっとおいしくかんじました。それで次々に夢中で食べました。
 そうしてる間に女王は矢継ぎ早に質問しました。
 エドマンドは食べることであたまがいっぱいで、聞かれるままに答えました。
 空き部屋のたんすを通ってここに来たこと、
 自分には兄と姉と妹がいること、
 妹のルーシィがここに来たことがあること、
 そしてタムナスというフォーンに会ったらしいこと・・・

 女王は4人兄弟というところに特に気がひかれたようで、何度もエドマンドに念を押しました。
 エドマンドはプリンを全部食べてしまって、物欲しげな顔で女王を見ています。
 女王は、今度そちの兄と姉と妹をつれてまいれ、そうすれば、もっと多くのプリンをやろう、それどころか、わが王子にして、ゆくゆくは王にしてやろう、と言いました。
 「わが館はあの二つの山のあいだじゃ。ではこんどきたら、あの街灯を見つけ、二つの山をさがしもとめて、森をつきぬけてくるがよい。そうすれば、わが館にいたるぞ。だが、こころせよ、かならず兄弟と一緒でなければならぬ。一人でくれば、わがきつい怒りをまねくこと、うたがいないぞ。」
 「つれてこられます。」
 「ついでにもうすと、わらわのこと、兄弟たちに話す出ないぞ。そちとわらわの秘密にしておいたほうが、おもしろくないか?おどろかしてやろうぞ。あの二つの山へつれてくるだけのこと、そちのようにいこうな子ならたやすく口実がつくれるだろう。」
 そういうと、女王は小人に合図して、トナカイを走らせ、去っていきました。
 エドマンドはなばねばの口と赤くほてった目で去った方向をぼうっと見ていると、後ろから「あら、エドマンド」と呼ぶ声がしました。
 ルーシィはうきうきした様子で、わたしはタムナスさんのところへお呼ばれしてたの、あなたも来てくれて嬉しいわ、と言いました。
 二人は衣装だんすから屋敷に戻ってきました。
 「それじゃ、あっちへ行ってみんなをさがしましょう。お話することがやまほどあるわ。それにこれからみんなして、どんな不思議な冒険をすることになるんでしょうね。」
 
 
 
 
 

ナルニア国物語 ライオンと魔女 6

2006-03-04 18:25:03 | Weblog
 どうも読みにくいので、また色をかえてみます。
 
 3 エドマンドのばん

 廊下に走って飛び出すと、ピーターたちはすぐそこにいました。しかし不思議なことにルーシィを見てもなんとも言いません。
 「ほら、帰ってきたわ。あれは魔法の衣装だんすよ。森につながってて何時間もそこにいて、お茶をいただいて・・・」
 「ばか言わないで、わたしたちは今、その部屋から出てきたばかりじゃない」とスーザンが言いました。
 「ここがいかれたな、」とエドマンドは自分の頭をちょんちょんと叩いてみせました。
 ルーシィは憤慨して3人をたんすに連れて行きましたが、なぜかコートのうしろはただの壁になっていました。
 どんなにルーシィが説明してもだれも信じてくれませんでした。
 それからエドマンドは、引き出しや扉のあるごとに開いて、「別の世界はどこにあるんだろう」などとルーシィをからかいました。
 いっそのことあんなことがなかったたなら、とルーシィは思い始めました。
 それからしばらくして、土砂降りの雨の日に兄弟は屋敷の中で鬼ごっこを始めました。スーザンが鬼です。
 ルーシィがたまたま例の空き部屋の前に来ると、足音が聞こえたので、とっさに部屋に入りました。
 思い出すのはいやなので、たんすには隠れたくない、と思いながら、ドアノブが回るのが見えたのでしかたなく入りました。
 ところがそれはエドマンドでした。
 エドマンドはルーシィの後ろ姿が見えたので、思う存分からかってやろう、と思い、たんすに入りました。
 ところが、どれだけ呼んでも、手を広げてもルーシィの気配がないのにはたまげました。
 それどころか、どれだけ奥に進んでも壁に当たらず、足元がさくさくして、急に寒くなってきました。
 不安になってきたところで遠くに明かりが見えたので、歩いていくと、街灯のランプでした。
 足元にはさらさらにかわいた雪があり、木々の枝にはふかぶかと雪がかぶっていました。頭のうえには冬ばれの朝によくみかける、青みがかった空がのぞいていました。おりからエドマンドの目の前に木々のあいだから日がのぼるところで、それは真っ赤であざやかな朝日でした。
 「ルーシィ、疑ってごめんよ、出ておいでよ」エドマンドは叫びました。
 しかし、ルーシィどころか生き物はエドマンド以外いないかのように静まりかえっていました。
 そのとき、どこからともなく、しゃんしゃん、と鈴の音がきこえてきました。音はだんだん近づいてきてとうとう目の前に二頭のトナカイのひく金色のそりが現れました。
 長いひげを伸ばした、小人の御者と、座席に雪よりも白い、堂々とした女の人がのっていました。美しい顔立ちでしたが、表情は氷のように厳しいものでした。
 「とまれ、」とえらそうな女の人がいいました。小人がきゅうにトナカイをひきしめたので、トナカイはしりもちをつきそうになりました。でも、すぐからだを立て直して、くつわを噛み、鼻息をたててたたずみました。きんきんする寒気のなかで、鼻息はけむりのようにふきだしました。
 「これ申せ、そちは何者じゃ」
 「ぼ、ぼく、ぼくはエドマンドです」
 「それが女王に対する口のききかたか」女の人はきっ、とにらみつけました。

 
 
 
 
 
 

 

ナルニア国物語 ライオンと魔女 5

2006-03-04 02:01:13 | Weblog
 ちょっと配色変えてみました。
 2 ルーシィのしったこと

 「・・・ああ、失礼しました。」フォーンはあたふたと荷物を拾いながらいいました。
 「こんばんは!」
 「ええ、よいお晩で。わたしはフォーンのタムナスと申します。」
 「わたしの名はルーシィですわ。」
 「ああ、初めてお会いしました・・・。イヴの娘さんですね。こんな雪のなかで立ち話もなんですから、これからわたしの洞窟にきてお茶でもしませんか。」
 ルーシィは遅くなるのが心配でしたが、
 「すぐそこです。わたしのところにはぼんぼん火がもえています。油付けの小イワシもトーストもありますし、お菓子もあります。」」
 「・・・うかがいます。でもあんまりながくはいられないわ。」
 ルーシィはタムナスさんに導かれて洞窟に来ました。
 そくには暖炉があって、赤い絨毯の上に木製のテーブルや椅子が置かれていました。ルーシィはこんな素敵なお部屋はは見たことが無い、と思いました。
 タムナスさんは素敵なご馳走と不思議なお話でもてなし、ルーシィはすっかりいい気分になりました。
 しかし、はっと気づいて、もうそろそろ帰らないと、と言うと、タムナスさんの顔は一瞬固まりました。そして手で顔を覆っておいおい泣き出してしまいました。
 「タムナスさん、一体全体どうして泣くの?」
 ルーシィは自分の白いハンカチをかしてあげました。
 「わたしは悪いフォーンだからなくんですよう」
 ルーシィはとてもそうは見えない、と言うと、わたしの正体は白い魔女の手下なのだ、といいました。白い魔女?
 「ナルニアじゅうをがっちり抑えてるのがそいつです。ここをいつも冬にしておくのがその女なんです。いつもいつも冬なのに、けっしてクリスマスがこない。なんてゆうことだろう。」
 そして、その魔女の命令にしたがって人さらいをしているのだ、といいます。
 「・・・そうは見えませんか、わたしになんにもしていない小さな子、かわいそうな無邪気なこどもに、森のなかでであうと、さも親しそうなふりをして、わたしの洞窟へその子をさそいこみ、いろいろとあやして眠らせてしまってから、白い魔女にその子をひきわたす。そんなものには見えませんか?」
 「見えませんわ」
 「でもそうなんです。そのかわいそうな子とはあなたのことです。」
 やっとルーシィにも事態がのみこめました。
 「おねがい、やめて、わたしを家に帰して。」
 「ええ、もちろんですとも、たとえ魔女にばれて石に変えられようとも、あなたとこうしてお話したあとでは、自分がどんなに愚かなことをしでかすところだったか、よおく分りました。」
 ルーシィはタムナスさんに街灯のところまで送ってもらいました。
 「あのハンカチいただけますか、イヴの娘さん、」
 「どうぞ」ルーシィは言って元きたほうへ歩いていきました。
 やがて、真っ暗ななかでつるつるした感触をほっぺたに感じると、たんすから空き部屋にもどってきました。
 「ここよ、みんな、帰ってきたわ」
 
 
 
 
 

ナルニア国物語 ライオンと魔女 4

2006-03-01 02:02:08 | Weblog
 では、あらすじに行きます。
 その前に、この本を読んで、この物語の魅力のもしかしたら半分以上は、その独特の文体にあるんじゃないか、と思いました。
 この本は前置きに書いてあるように、ルイスの親しい友人の娘、ルーシィ・バーフィールドに捧げられています。
 だから、小さい子供に優しく語りかけるような雰囲気があります。
 天気の良い昼下がりにルイスが書斎にルーシィちゃんを招きいれ、おいしいスコーンと紅茶を用意して、
 「さあ、昨日のつづきからだよ・・・」
 と語りだす情景が思い浮かびます。
 また翻訳の瀬田貞二さんの丁寧な日本語がそのようなルイスの語り口に合っています。瀬田さんの文は子供には親密に、大人にはややくどく感じるかもしれません。それと、瀬田さんは俳人でもあって、俳諧で培った日本語のセンスが翻訳にもいかされてるそうです。そういえば、不思議なゆったりしたリズムがあるような気がします。
 そこで、ぼくはあらすじを書こうとして、少し悩みました。
 ストーリーの骨格みを取り出して書くだけだと、この物語の魅力をまるっきりスポイルしてしまうのではないか、と。
 そして、読んだことのない人につまらない本だと思わせてしまうんじゃないか、と。
 そうだ、と閃きました。そのまま写せばいいじゃないか、と。
 それは冗談ですが、また宮澤賢治の時と同じで方法で、抜書きを多用しようと思いましす。
 その箇所は太字で書きます。
 また、今回は原作と同じ章わけに従って書こうと思います。章のタイトルは青字にしてみました。(そうゆう機能にようやく最近気がつきました)

 ルーシィ、衣装だんすをあけてみる

 第二次世界大戦のころのことです。
 ペベンシー家の4人の兄弟はロンドンから空襲をさけて、森にかこまれた屋敷に疎開してきました。
 その屋敷には頭から顔にかけてもじゃもじゃに毛のはえた老学者と、3人の家政婦さんがすんでいました。
 部屋に落ち着くと、兄弟は興奮してしゃべりました。
 「僕たちはついてるよ。あの先生はきっとおもしろいよ。森にも何があるか分らない、明日は外に探検だ!」と1番年上の兄のピーターが言いました。
 「わたし、来る途中でアナグマを見たわ!」とお姉さんのスーザンが言いました。
 「あれ、あの声は何かしら?」1番下の妹のルーシィが少しおびえて言いました。
 「あれはただのフクロウだよ、ばかだなぁ」と、ルーシィより一つだけ年上のエドマンドがふんっという感じで言いました。
 しかし、翌日は土砂降りの雨でした。
 「ああ、どうせこんなことだろうと思っていたさ」とエドマンド。
 「何も問題は無いさ、このお屋敷を探検しようよ」とピーター。
 その提案に皆、賛成しました。
 屋敷は見たこともないぐらいに大きく、しかも複雑に入り組んでいたので探検のいがいがありました。
 4人がある部屋にくると、壁際に古くて頑丈そうな衣装だんすがあるだけで、何もありませんでした。
 「ここには何もなーし!」
 そう叫ぶとピーター、スーザン、エドマンドは次の部屋にいきました。
 しかしルーシィだけはたんすに惹きつけられるて、その扉を開けて見ました。
 中には黒い毛皮のコートが何着も吊るしてありました。
 ルーシィは毛皮にほお擦りすることほど好きなことはなかったので、夢中でほお擦りするうちにどんどんたんすの中に入ってゆきました。
 すると不思議なことにつるつるする感触がちくちくに変わり、床の板の感覚が柔らかいものを踏みつける感覚にかわりました。また凄く寒くなりました。
 気がつくと、なんと真夜中の森の中に立っていて、足元には雪がつもり空から雪がふっていたのです。ルーシィはすこしこわくなりました。けれどもいっぽうで心がわくわくして、ゆくてをつきとめたくてたまらなくなりました。
 遠くにちらちらと明かりがみえるので、雪を踏みしめてあるいていくと、それは街灯のランプでした。
 どうして森の真ん中に街灯があるのかしら、そしてこれからどうしようかしら、
 と考えていると、後ろでどさっと物を落とす音がしました。
 振り返ってみると、そこには荷物を雪の上に落として目をまんまるくしているフォーンがいました。
 フォーンは上半身人間、下半身黒ヤギの森のちいさな(背がちいさいという意味ではありません)神です。
 「なんてこった!」
 フォーンは大声をあげました。