拝島正子のブログ

をとこもすなるぶろぐといふものを、をんなもしてみむとてするなり

寝所におけるすり替え

2019-11-14 09:09:06 | 音楽
旧約聖書と源氏物語とRシュトラウスのオペラ(アラベラ)に共通のエピソードがあった。男が愛しい人と関係をもとうと寝所に入ったら相手がすり替えられていた、という話である。すり替わっていたのは姉妹であることと、誰かの企みでそうなった点は同じなのだが違いがある。まずは旧約聖書。しくんだのは姉妹の父親。妹娘と結婚したがってる男に7年間ただ働きをしたら結婚させてやると言ってただ働きをさせる。7年経って晴れて結婚が許され新婦がいるはずの寝所に入った男は翌朝相手が姉娘だったことに気がつく。姉妹の父親の差し金である。なぜ?といきまく新郎に、もう7年ただ働きをするんだったら妹娘とも結婚させてやる……これである。男は承諾、結局妻を二人持つことになったが愛情はもとから好きだった妹娘に傾き姉娘は悲しむ……なんだか源氏物語である。その源氏物語でしくんだのは姉娘。妹と同じ寝所で寝ていたのだが、自分に気のある男(中納言)が侵入してくることを察知して、そっと抜け出した。しかし、男はすり替えに気づき、ことは未遂に終わった。姉の思惑は、自分は独身主義者だから男を妹と結婚させようと思ったのである。ここまで古代イスラエル、そして平安の日本と来た。最後の舞台は20世紀のウィーンである。男に愛するアラベラの部屋の鍵が届けられる。逢い引きに誘う鍵である。事を終え、部屋から出て余韻に浸っている男の前にアラベラが登場。何にもなかったように振る舞うアラベラに男はとまどう。実際、アラベラには何事もなかった。男の相手をしたのはアラベラの妹で、すべてその妹が仕組んだことであった。妹はその男のことが好きだったのである。と書くと、策略で姉から横取りを図ったか、と思われるだろうが、そうではなく、アラベラが結婚すると聞いてその男が自殺しそうないきおいだったので、自分が姉のふりをして慰めようとしたのである。それにしても、旧約にしろアラベラにしろ相手を間違えるかー?というのが素朴な疑問である。よっぽど真っ暗だったに違いない。少しでも明かりがあると夜目に慣れてきて見えてくるだろうから、一切の光源をシャットアウトする必要がある。間違えてもおかしくないのは源氏物語。あの時代の男は、そもそも女性の顔をほとんど見ていなくて、文のやりとりでいい女だと想像して恋愛をするのだという。にもかかわらず、中納言は相手が違うと分かった。相手が違っててもここまで来たらかまうものかー、にならないところは元祖草食系というか、いや、失礼しました、よっぽど本来好きな方への愛情が強うござったのでせうね。