誰でも自分の一番初めの記憶は何かと思い起こすことがあると思うが、アルバムを何度か見ることで刷り込まれたものなのか、実際の記憶なのか曖昧な部分もある。
私にとって一番はっきりとした最初の記憶は、祖父の葬儀のことだ。
朝起きてみたら亡くなっていたという穏やかな死ではあったが、すぐに親戚がやって来て忙しくしているのをみて、5歳になる直前だった私には、まず大変な事件が起こったという認識がやって来た。
一歳下の従妹を引き連れ、小雨降る中を傘を差して「うちのおじいちゃんが死にました~」と叫びながら近所を歩いたという、おバカなお調子者だった私。
親戚が集まって出前のお寿司が来たりし始めて、可愛がってくれた祖父が亡くなったのに、なんだかお祭り気分ではしゃいでいたことも思い出せる。
そして、一番記憶にあるのは棺に入れる枕の高さを調節していた大人たちが、私の枕が一番高さが合っていることを確認し、それから私に向かって済まなそうに言った。
「○○ちゃん、この枕おじいちゃんにあげてもいい?」
「いいよ」
別に枕に執着はなかった。
「そう!」と急に大人たちが笑顔を見せた。
「○○ちゃんはいい子ねえ」
「えらいねえ」
「じゃあ○○ちゃんには『わんわん物語』の絵を描いた枕をつくってあげるからね!」
普段構ってもくれない大人たちが代わる代わる私の頭をなぜて褒めちぎるうちに、私の中で何かがはじけ、これは大変なことになったと初めて祖父の死を体で感じた。
その衝撃が今でも思い出せる。
その前の晩、数日後に控えた入園式で着る真新しい制服を着て、寝たきりだった祖父の枕元に見せに行ったこと、目を細めて大きくなったねえという祖父に、自慢げに桃太郎の物語を話して聞かせたことを思い出した。
さらに、母に叱られると祖父の枕元へ逃げ込んだことや、いつもおやつを半分だけ食べて、もらえることを知っていて駆け寄る私を嬉しそうにみていた祖父の顔が浮かんだ。
どうしよう、おじいちゃんはもう二度と目覚めないのだ。だから大人はこんなにいつもと違うのだ。
90歳という年齢と穏やかに迎えた死に、親戚たちも動揺することなく葬儀は進められた。
柩の周りに次々と花が添えられて、祖父の顔が埋まって行く。
注がれた愛を疑うことなく信じられた人の死が、4歳の私に迫るのを感じた。
何故か記憶はそこで切れ、その後のことを覚えていないが、母が言うには
「○○ちゃんもお花を入れなさい」とうながされた瞬間、私の泣き声が響き渡ったらしい。
私にとって最初の記憶は、愛する人の死だった。
沖さん。その日は遠いつもりでした。
報われない愛でしたが、あなたがこの土のつながっているところのどこかにいると思うだけで幸せだったのに。
永遠に会えないと思うと、今でもその土の上に突っ伏してしまいそうになります。
願わくば死後の世界がありますように。
そしてその世界であなたを探し出せますように。
私にとって一番はっきりとした最初の記憶は、祖父の葬儀のことだ。
朝起きてみたら亡くなっていたという穏やかな死ではあったが、すぐに親戚がやって来て忙しくしているのをみて、5歳になる直前だった私には、まず大変な事件が起こったという認識がやって来た。
一歳下の従妹を引き連れ、小雨降る中を傘を差して「うちのおじいちゃんが死にました~」と叫びながら近所を歩いたという、おバカなお調子者だった私。
親戚が集まって出前のお寿司が来たりし始めて、可愛がってくれた祖父が亡くなったのに、なんだかお祭り気分ではしゃいでいたことも思い出せる。
そして、一番記憶にあるのは棺に入れる枕の高さを調節していた大人たちが、私の枕が一番高さが合っていることを確認し、それから私に向かって済まなそうに言った。
「○○ちゃん、この枕おじいちゃんにあげてもいい?」
「いいよ」
別に枕に執着はなかった。
「そう!」と急に大人たちが笑顔を見せた。
「○○ちゃんはいい子ねえ」
「えらいねえ」
「じゃあ○○ちゃんには『わんわん物語』の絵を描いた枕をつくってあげるからね!」
普段構ってもくれない大人たちが代わる代わる私の頭をなぜて褒めちぎるうちに、私の中で何かがはじけ、これは大変なことになったと初めて祖父の死を体で感じた。
その衝撃が今でも思い出せる。
その前の晩、数日後に控えた入園式で着る真新しい制服を着て、寝たきりだった祖父の枕元に見せに行ったこと、目を細めて大きくなったねえという祖父に、自慢げに桃太郎の物語を話して聞かせたことを思い出した。
さらに、母に叱られると祖父の枕元へ逃げ込んだことや、いつもおやつを半分だけ食べて、もらえることを知っていて駆け寄る私を嬉しそうにみていた祖父の顔が浮かんだ。
どうしよう、おじいちゃんはもう二度と目覚めないのだ。だから大人はこんなにいつもと違うのだ。
90歳という年齢と穏やかに迎えた死に、親戚たちも動揺することなく葬儀は進められた。
柩の周りに次々と花が添えられて、祖父の顔が埋まって行く。
注がれた愛を疑うことなく信じられた人の死が、4歳の私に迫るのを感じた。
何故か記憶はそこで切れ、その後のことを覚えていないが、母が言うには
「○○ちゃんもお花を入れなさい」とうながされた瞬間、私の泣き声が響き渡ったらしい。
私にとって最初の記憶は、愛する人の死だった。
沖さん。その日は遠いつもりでした。
報われない愛でしたが、あなたがこの土のつながっているところのどこかにいると思うだけで幸せだったのに。
永遠に会えないと思うと、今でもその土の上に突っ伏してしまいそうになります。
願わくば死後の世界がありますように。
そしてその世界であなたを探し出せますように。
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