And This Is Not Elf Land

もうすぐオープン③


若き3人のクリエイターによって生み出された新作オリジナルミュージカルCUTMAN。初めて観客に披露される日まで、ついに1週間を切りました!!

(今回は、長々と書いております)

こちらで、Goodspeedのサイトにあるジャレッド・マイケル・コセリアの話を紹介いたしましたが、地元メディアである、THE MIDDLETOWN PRESSJEWISH LEDGERも、実に興味深い記事を載せてくれています。

先の記事にもありますが、20世紀の前半は、ユダヤ系ボクサーたちの黄金時代で、チャンピオンもたくさんいました。その後、ロワー・イーストサイドに住みついていたユダヤ系住民の子弟たちも、高等教育を受けるチャンスを得るようになると、ボクシングよりも、学術・経済などの分野で活躍するようになり、ボクシングとユダヤ人を結び付けて考えられることは、次第に少なくなってきたと言われます。

ミュージカルCUTMANは、あらためて、時代設定を「現代」にもってきました。先の記事で、2006年にreality TVでボクサーたちの格闘を描かれるのを見て感動したコーリー・グラントとジャレッドが、これを題材にして何か作りだすことができないものかと思ったことがCUTMANの始まりであると書きましたが…特に近年は、ボクシングというスポーツ自体が、ポップカルチャーと結びつきも強く、直感的に、それはミュージカルとして最適な素材であるに違いないと感じました。

CUTMAMができるまでのことはこちらで詳しく紹介し、コーリーとジャレッドが大学在学中にプロダクションを立ち上げたことが、そもそもの「始まり」であると述べていますが…それ以来、この二人の共同脚本によるプレイを何度か手がけていました。そして、今回は、初の「ミュージカル」の創作ということになります。そこで、二人は、これまでのプレイで音楽を担当してもらっていたドリュー・ブロディーに曲を書いてもらうことにしました。

さて、ここでなんですが~
ミュージカル」というものは、どのようにして作られるものなのか?…私自身、これまで、あまり考えたこともなかったのですが、彼らのインタビューを読んでいて興味深いと思ったのは…結局、シンガー&ソングライターであるドリューが(当然)作詞・作曲をすることになるので、コーリーとジャレッドは、音楽を挿入する「余地」のある脚本を作ったということです。通常であれば、脚本を書く人が、「台詞」の部分とともに、「歌詞」の部分も創作するものなのでは?(よくわかりませんが…汗)とにかく、お互いに刺激し合ってきた若いクリエイターたちが、ちょっとユニークなやり方で、オリジナル作品を創り上げた過程というのも、何とも新鮮ではあります。

CUTMANの世界にリアリティーを持たせるために、ジャレッド自身もボクシングを始めました。彼は、それまではボクシングに対しては、一般の人が抱くのと同じような印象しかもっていなかったのですが、実際に始めてみると、それは自身の人生を変えるものであったと言います。ボクシングは優雅で、エレガントで…それぞれの動きには「言語」があり、それは、心身に負荷をかけるものに対して、自らの力でそれらを打ち破っていくことを要求してきます。彼自身も、厳しいトレーニングを通して、恋愛・ビジネス・芸術のすべての面で向上することができたと言います。(ちょっと余談ですが、この人はIT系の会社も立ち上げているはずです)

ドリューは、コーリーやジャレッドとは違って、ボクシングそのものにのめりこむことはありませんでした。しかし、スポーツとしてのボクシングと、それに打ち込む人たちに対する尊敬の念は普通に芽生えてきたと言います。そして、ボクシングそのものが、本来音楽的であって、リズムに富んだものであることに気付きます。(ミュージシャンですな~)CUTMANはオープニングからインパクトのあるリズムの音楽で始まります。この作品は、何よりも、ユダヤ系のボクサーの話でもあり、彼自身も、幼いころから親しんできたユダヤ音楽の様式を見直してみたそうです。

とにかく、reality TVでボクシングに人生をかける人々を観て感動したのが2006年の夏で、その年のクリスマス・シーズンに、1週間で、だいたいの脚本を書き上げたと言います。そして、2007年の7月、その年の10月に開催されるNew York Musical Theatre Festival (NYMF)に、リーディングで参加することが決定しました。それまでに、デモテープなども完成させてしまっていたわけですから…まぁ、若い情熱の赴くままに、一気に創り上げたのかな~という気がいたします。



それでも、そこから今回の初のフルプロダクションまでに至る道のりは、「長い産みの苦しみ」だったとジャレッドは振り返ります。(ふたたび余談ですが、ジャレッド・マイケル・コセリアはシチリア系ユダヤ人の子孫なんだそうですね。だから、名前がイタリアンなのか…)チームの3人で、何度も何度も話し合って、その都度、手を加えていきました。Goodspeedでの上演のチャンスが与えられたことで、この作品は、構造的に、様式的に、より発展したものになりました。ストリーの中では、登場人物それぞれに、明確な形でメタファーを持たせ、それぞれの人物の、それぞれの信仰とのかかわり方は、一つひとつの典型として描かれていると言います。

CUTMANは「ヒューマニティーというものを深く追求した作品」であり、「人間というものは、愛のために、信じる道のために、家族のために…何を犠牲にしていくものなのか」観客に問いかける作品であるとも。(Goodspeedでプロデュースを手掛けるプライス氏は「この作品を観終わった後、立ち上がることができなかった」とインタビューで語っていました)

CUTMANを創り出した、ジャレッド・マイケル・コセリア、コーリー・グラント、ドリュー・ブロディーの3人は、この作品が、完全な「オリジナル」であることに、何よりも誇りを持っています。

脚本を書いたジャレッド・マイケル・コセリアは、こう締めくくっています。

CUTMANのメッセージが、一人ひとりの心の中で、じっくり浸されて、それがそれぞれの人生に違いを生みだすようになればいいと思う。人間は、みな、毎日「自分の信じる道」と向き合いながら生きているのだから。



(もう少し続きます…笑)
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