Hawthorneはマサチューセッツの清教徒の旧家に生まれた。初代はクェーカー教徒を鞭打ちの刑に処し、2代目は「魔女裁判」の判事を務めた。彼の作品も清教徒にまつわる罪の意識がテーマになっている。短編Young Goodman Brownも同様である。罪の概念については先祖か信じていたものを踏襲していたが、罪がもたらす結果、贖罪、愛、再生については、清教徒の伝統とは異なる視点を持っていた。
The Scarlet LetterはHawthorneの代表作。
17世紀、マサチューセッツの入植地にある処刑台にHesterという若い女性が、生後数ヶ月の女児を抱いてさらしものにされていた。胸にはAdultery(不貞)を表す「A」という緋色の文字を付けていた。彼女は赤ん坊の父親の名前を決して口にはしなかった。
彼女は夫よりも先に英国から新大陸に来たのだが、後に到着するはずだった夫が消息不明となり、その間に若く情熱的な牧師と恋に落ち、不義の子Pearlを産んだのだった。姦通罪は厳格な清教徒社会では重罪である。彼女は3時間さらしものにされた後、一時収監され、生涯胸の上にはAという文字を付けなければならないという罰を受ける。
注目すべきは、Hesterと牧師は最初から「赦されているもの」として描かれていることである。Hesterは強い意思と高い能力を持った女性であった。人里離れた一軒家でPearlとふたり、地域とのかかわりを持たずに生きることを余儀なくされるが、針仕事の高い技術を持っていたことで、彼女に細工の凝った付け襟や帯などを頼む者が後を立たず、彼女は娘と最小限の生活をしていくのに困らない程度の収入を得ることができたのだった。
彼女の胸にある「A」もまた、凝った刺繍が施されたものであり、人目を惹かずにはおかないものだった。厳格な清教徒たちは本来、華美なものを嫌い、遠ざけていた。しかし、大陸で流行し、もてはやされていたもの全てを「なしで済ますのは辛い」と考えた当時の人たちは、罪人とみなされている女性に仕事を依頼し、少しの虚栄心を満たしたのだった。
後半のエピソードに出てくる貨物船の船長と船員たち。洋上を棲家とし、人間の掟を守ることのない荒くれ者たちではあったにもかかわらず、厳格な清教徒社会で、(利害も絡んでいたのではあろうが、)不思議と受け容れられている描写も興味深い。
牧師は罪の意識に苦しむ。Hesterがさらし者にされていたときに、たまたま現れた彼女の夫は真実を知り、陰湿な復讐を企てるのだった。三人の息詰まる心理劇が展開するが、作品自体は寓意的で小説としての面白さは少ない。人物描写も非現実的。特にHesterはもっとリアルに描かれていれば、今日的なテーマも読みとれる作品になったことであろう。…とはいうものの、今なおアメリカ文学の代表作のひとつとして揺るぎない位置を占めているのは、原罪と贖罪、愛と知の葛藤など、清教徒の伝統的な属性が色濃く現れているからであろう。清教主義が世界に残したものは少なくない。
{不思議とも思えることは、世界が目の前に広がっているのに…この女性がそこにいれば、ただそれだけで恥辱の典型とならなければならぬこの土地をなお故郷と呼んだりすることだ。だが、宿命というものがある。運命の力と逆らいきれぬほど強く避けがたい感情というものがある。…その生涯を悲しいものにする色合いが暗ければ暗いほど、運命の力はいっそう逆らい難い。}
Hesterは緋文字という大きな「恥辱」とともに生きることを余儀なくされたことによって、「これ以上、失うもの・守らねばならぬものもない」ある種の「心の自由」を得ていた。彼女自身の中の豊かな人間性がそれを可能にしたともいえる。
そればかりか、彼女は緋文字を付けていることによって「新しい感覚」が生まれたような気がしていた。そして、その感覚によって人々の胸に宿る隠れた罪を感知できるような感覚に陥った。
{天使と同列にある人間として敬っていた徳の高い牧師や官吏の傍を通り過ぎる時、彼女の胸の赤い汚名の印が共鳴してどきどきすることがあった。「私の傍にいるのはどんな悪鬼なんだろう。」…年配の婦人の真面目くさった頻め面に出会うときも、同じ密かな罪人だと言う感じが執拗に頭をもたげるのだった。…「ごらん、ヘスタ、これも仲間だよ。」}
夫の遺産を相続したHesterはPearlと一旦入植地を出るが、晩年はかつての一軒家に戻り、人々の苦悩を癒す女性として生涯を終えた。
{自分の固い信念を告げて、この世がそれにふさわしいほど成熟し、もっと明るい時代が来て、神の意思がそのまま実現する時代となり、男女の関係全てを幸福という…新しい真理が啓示されると言った。}
ON A FIELD, SABLE, THE LETTER A, GULES
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