近頃、SNSで世の中をミスリードしようとする投稿が目につきます。
まずは、“ウィルスは存在しない。”とか“新型コロナウィルスが存在することは証明されていない。”というもの。
何を言っているのか?って感じですね。
そもそもウィルス感染症は人間だけでなくいろいろな動物や植物でも研究されており、広い領域でその存在が確認されているのものです。
とりあえずウィルスに限らず、病原体をどうやって確定するかについて復習しましょう。
一般に微生物が原因と思われる新疾病で病原体を確定しようとすると、以下に記したコッホの4原則に従って、原因となる病原菌を分離し、正確に同定する必要があります。この4条件がすべて満たされて初めて「その病気の原因となる病原体である。」と言うことができるのです。
①共通の病状を示す患者から共通の微生物が検出される。
②その微生物が分離・培養できる。
③純培養された微生物を健康な個体に感染させることで病状が再現できる。
④人工的に感染させた患者から人工感染に用いたのと同じ微生物が検出される。
しかし、ウイルス病に関してはコッホの4原則をそのまま適用することはできません。
そもそもウィルスは自分で増えることができません。宿主の細胞の中に取り込まれて、その細胞が間違ってウィルスを増やしてあげているのです。しかもウィルスは宿主の特定の臓器細胞によってのみ増幅されるという念の入れようなので、人工的にそのウィルスを増やそうと思うと、そのウィルスを増幅してくれる臓器細胞を培養するところから始めないといけないのです。
だから新しい疾病に関与していそうな新発見のウィルスはコッホの4原則の②から先が満たせないので、病原体らしきものは見つけ出せてるのに病原体として確定できないってことになっていたのです。
しかしここ20年くらいすさまじい勢いで進歩してきた遺伝子研究によって、培養困難な微生物につても遺伝子診断をベースに、血清反応を利用したイムノクロマト法や電子顕微鏡を使った粒子構造解析などの複数の手法を組み合わせて原因となる病原体を同定し確定できるようになりました。
1996年にデヴィッド N.フレドリックスとデヴィッド A.レルマンが以下の7原則を満たせば、ウイルスが分離・培養されなくても、原因ウィルスと結論づけることができると提案しています。
① 感染症のほとんどの症例では、推定病原体に属する核酸配列が存在する。その微生物の核酸は、病変のない臓器では検出されず、病変のある臓器で優先的に検出される。
② 発病していない宿主または臓器組織では、病原体関連核酸配列のコピー数はより少ないか、またはまったく存在しない。
③ 病気が治れば、病原体関連核酸配列のコピー数は減少するか、検出されなくなる。再発すると、再び検出される。
④ 発病前に核酸配列が検された場合、または核酸配列のコピー数が症状の重さや病変の範囲と関連して変化している場合には、核酸配列と病変との間に因果関係がある可能性が高くなる。
⑤ 核酸配列から推定される微生物の性質は、そのグループの微生物で知られている生物学的特徴と一致している必要がある。表現型 (病理、微生物の形態、臨床的特徴など) が配列に基づく系統関係によって予測されると、核酸配列の意義が高まる。
⑥ 組織レベルで検出された核酸配列は細胞レベルで検出された酢酸配列と相同しており、病変のある組織領域やウィルス様粒子が観察される部位またはウィルスが存在すると推定される領域において、In situ ハイブリダイゼーション法によってそのウィルスに特徴的な核酸配列を見つけなければならない。
⑦ 微生物の因果関係に関するこれらの核酸配列に基づく証拠は再現できなければならない。
ウィルスに限らず分離・培養ができない微生物が原因と思われる疾病に関しても、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)や次世代シーケンサーの活用によって核酸配列を検出することができれば、上記の7原則に基づいて病原体を確定することが可能でしょう。
参考までに、重症急性呼吸器症候群(SARS)や新型コロナウイルス感染症(COVID-19)では容易にウイルスの分離・培養ができたようで、動物への感染実験や人間への感染実験を経ることでコッホの4原則とフレドリック&レルマンの7原則に従って原因ウィルスが確定されています。
冒頭に書いた“ウィルスは存在しない”“新型コロナウィルスが存在することは証明されていない”とのミスリードを信じてしまった方々には、ウィルスが“濾過性病原体”とか“生命を持った感染性の液体”と呼ばれていた1890年代に遡ってウィルス研究の歴史を一から勉強していただきたいものです。
まずは、“ウィルスは存在しない。”とか“新型コロナウィルスが存在することは証明されていない。”というもの。
何を言っているのか?って感じですね。
そもそもウィルス感染症は人間だけでなくいろいろな動物や植物でも研究されており、広い領域でその存在が確認されているのものです。
とりあえずウィルスに限らず、病原体をどうやって確定するかについて復習しましょう。
一般に微生物が原因と思われる新疾病で病原体を確定しようとすると、以下に記したコッホの4原則に従って、原因となる病原菌を分離し、正確に同定する必要があります。この4条件がすべて満たされて初めて「その病気の原因となる病原体である。」と言うことができるのです。
①共通の病状を示す患者から共通の微生物が検出される。
②その微生物が分離・培養できる。
③純培養された微生物を健康な個体に感染させることで病状が再現できる。
④人工的に感染させた患者から人工感染に用いたのと同じ微生物が検出される。
しかし、ウイルス病に関してはコッホの4原則をそのまま適用することはできません。
そもそもウィルスは自分で増えることができません。宿主の細胞の中に取り込まれて、その細胞が間違ってウィルスを増やしてあげているのです。しかもウィルスは宿主の特定の臓器細胞によってのみ増幅されるという念の入れようなので、人工的にそのウィルスを増やそうと思うと、そのウィルスを増幅してくれる臓器細胞を培養するところから始めないといけないのです。
だから新しい疾病に関与していそうな新発見のウィルスはコッホの4原則の②から先が満たせないので、病原体らしきものは見つけ出せてるのに病原体として確定できないってことになっていたのです。
しかしここ20年くらいすさまじい勢いで進歩してきた遺伝子研究によって、培養困難な微生物につても遺伝子診断をベースに、血清反応を利用したイムノクロマト法や電子顕微鏡を使った粒子構造解析などの複数の手法を組み合わせて原因となる病原体を同定し確定できるようになりました。
1996年にデヴィッド N.フレドリックスとデヴィッド A.レルマンが以下の7原則を満たせば、ウイルスが分離・培養されなくても、原因ウィルスと結論づけることができると提案しています。
① 感染症のほとんどの症例では、推定病原体に属する核酸配列が存在する。その微生物の核酸は、病変のない臓器では検出されず、病変のある臓器で優先的に検出される。
② 発病していない宿主または臓器組織では、病原体関連核酸配列のコピー数はより少ないか、またはまったく存在しない。
③ 病気が治れば、病原体関連核酸配列のコピー数は減少するか、検出されなくなる。再発すると、再び検出される。
④ 発病前に核酸配列が検された場合、または核酸配列のコピー数が症状の重さや病変の範囲と関連して変化している場合には、核酸配列と病変との間に因果関係がある可能性が高くなる。
⑤ 核酸配列から推定される微生物の性質は、そのグループの微生物で知られている生物学的特徴と一致している必要がある。表現型 (病理、微生物の形態、臨床的特徴など) が配列に基づく系統関係によって予測されると、核酸配列の意義が高まる。
⑥ 組織レベルで検出された核酸配列は細胞レベルで検出された酢酸配列と相同しており、病変のある組織領域やウィルス様粒子が観察される部位またはウィルスが存在すると推定される領域において、In situ ハイブリダイゼーション法によってそのウィルスに特徴的な核酸配列を見つけなければならない。
⑦ 微生物の因果関係に関するこれらの核酸配列に基づく証拠は再現できなければならない。
ウィルスに限らず分離・培養ができない微生物が原因と思われる疾病に関しても、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)や次世代シーケンサーの活用によって核酸配列を検出することができれば、上記の7原則に基づいて病原体を確定することが可能でしょう。
参考までに、重症急性呼吸器症候群(SARS)や新型コロナウイルス感染症(COVID-19)では容易にウイルスの分離・培養ができたようで、動物への感染実験や人間への感染実験を経ることでコッホの4原則とフレドリック&レルマンの7原則に従って原因ウィルスが確定されています。
冒頭に書いた“ウィルスは存在しない”“新型コロナウィルスが存在することは証明されていない”とのミスリードを信じてしまった方々には、ウィルスが“濾過性病原体”とか“生命を持った感染性の液体”と呼ばれていた1890年代に遡ってウィルス研究の歴史を一から勉強していただきたいものです。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます