男をあきらめていた俺に、突然の嵐が訪れた。何回か同棲をして、最後はみじめに振られ、
ここ2年、女々しい生活を過ごして来たが、ようやく踏ん切りがつき、妄想癖も完治しよう
かという矢先だった。
暮れの忘年会。行きつけの居酒屋で親しい友人達と飲んでいたが、一人帰り、二人がつくと
俺と後輩のKだけになった。そのKは横になって、いびきをかいている。ふと時計を見ると
真夜中の1時半、おれもそろそろ…と腰を上げた時に、その店の女店員が突然横に座った!
「私の気持ち分かっているでしょう?」と、体を摺り寄せてくる。その女性はどちらかと言うと
真面目な印象だった。容姿は普通だが、笑顔に魅せられた客も何人かいた。俺とて「いい子だ
なあ」という感情は抱いていた。
しかし、しかしである。歳が20歳もちがうのだ。そう問うと、「私は若い子はだめなんです」
と、恥ずかしそうに言った。その夜は、我々だけの貸切で、店主は11時頃に帰っていた。だか
ら、店にいるのは3人。そのうち一人はいびきをかいて寝ている…。
「2階に行きませんか?」と、彼女。「はあ…」と、完全に酔っ払っている俺。なにしろ、夕方
の5時から飲んで、この店は3軒目。ビール、ウィスキー、焼酎、日本酒と、全部入れると20
杯以上は飲んで頭のてっぺんから足のつま先までアルコールが回っている。それでも彼女の真剣
なまなざしに魅入られて2階の小部屋に上がった。
見ると、彼女はすでに服を脱いで蒲団の中に入っていた。なんと、なんという積極さだ!こんな
漫画のようなストリーが俺にもあるのか?一瞬戸惑ったが、彼女が、「早く、早く!」というので
上下全部脱いだ。しかし、その日は寒かった。体全体にブルッと悪寒が走った。
その時に分かった。今日の俺はたぶんダメだろうと…。大量のアルコールにこの寒さ、しかもここ
2年間ご無沙汰で、なんの準備?もできていない。おそらく「ジュニア」は機能しないだろうと…。
男という動物は、そう思っただけでより深刻な不能に陥るのだ。
案の定だった。「ジュニア」は奥の方に引っ込んで、まったく出てこない。彼女がいろいろ努力して
くれたが(この部分は省く…笑)、うなだれて30分後に階段を降りて行った。そして後輩を起こし、
静かに店を出て行ったのである。
あれから2週間余り、いつもと変わらぬ生活を送っている。考えてみると、それは男を取り戻すチャ
ンスではなく、「これで完全にあきらめなさい!」という最後通告ではなかったのか?そう思うこと
もあるが、その女性が男の本能に火をつけてくれたという気持ちもある。そして俺は、後者を選択し
ている。
今年は静から動へ、最後の「あがき」をしてみるか!去年の12月から復活のテーマにしているのが、
「ワイルドで行こう!」なのである。