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KCO名曲スペシャル:ニューイヤー・コンサート2024(1月26日)

2024年01月26日 | コンサート
ニューイヤー・コンサートと言えば毎年元旦に開催されるウイーン・フィルのものがつとに有名であるが、昨今は初登場や珍しい曲ばかりで組まれる傾向があるように思える。それはそれで良いのだが、どうも私には音楽的に物足りなさを感じるようになって来た。そこへゆくとこの紀尾井ホール室内管弦楽団とその名誉指揮者でウイーン・フィルのコンマスも務めるライナー・ホーネックの演るニューイヤー・コンサートは曲目がとりわけ変化に富んでいて飽きることがない。まず一部はモーツアルトの歌劇「フィガロの結婚」の序曲で始まり、ホーネックの弾き振りによるバイオリン協奏曲第5番イ長調K219が続いた。まあここまではある意味腕試し的な感じで、紀尾井のアンサンブル自体もちょっと荒いかなと感じられる所もあった。しかし協奏曲ではホーネックの軽やかさと機敏さを併せ持った爽やかなウイーン風に酔った。休憩後の最初は何とリヒャルト・シュトラウスの楽劇「バラの騎士」よりワルツ・シークエンス第2番。楽劇の第3幕の音楽だけで構成された優美な香りに満ちた蠱惑的なメロディが次から次へとホールを満たし、一気にアンサンブルの熱量も上がり紀尾井ホールがあたかもウイーンのシュターツ・オパーになったよう。そして続く「バラ」のワルツの原型が聴かれるヨーゼフ・シュトラウスのワルツ〈ディナミーデン〉のアカデミックな選曲に唸った。驚くべきは次のコルンゴルドのバレエ音楽〈雪だるま〉からの抜粋だった。これは作曲者11歳の時のピアノ曲をエーリッヒ・ウオルフガング・ツエムリンスキーがオーケストレーションした不思議な魅力的を秘めた音楽だった。そしてヨゼフ・シュトラウスのポルカ・マズルカ〈とんぼ〉、ヨーゼフ・ヘルメスベルガー2世の〈妖精の踊り〉、ヨゼフ・シュトラウスのポルカ・シュネル〈休暇旅行で〉と続き、その後は趣をガラリと変えてヨハン・シュトラウス2世の〈芸術家のカドリーユ〉で、メンデルスゾーン、モーツアルト、ウエーバー、ショパン、パガニーニ、マイヤベアー、エルンスト、シューベルト等の作曲家達の大パロディ大会に思わずニヤリとさせられる。この後は純粋なウインナ・メロディが、ヨゼフ・シュトラウス&ヨハン・シュトラウス2世のピチカート・ポルカ、ヨゼフ・シュトラウスのポルカ・シュネル〈おしゃべりな可愛い口〉、ヨーゼフ・シュトラウスのワルツ〈天体の音楽〉、ヨーゼフ・シュトラウスのポルカ・シュネル〈騎手〉と続き、これで本プログラムが終了した。ここまでをシュトラウス・ファミリーの音楽だけで見ると、8曲中6曲がヨゼフ・シュトラウスの作品、1曲がヨゼフとヨハン2世の合作、最も有名なヨハン・シュトラウス2世の作品に至ってはたった1曲だけという極めて特異な構成だ。更に8曲中ワルツは〈天体の音楽〉と〈ディナミーデン〉のたった2曲しかないのだ。しかしながらウイーン情緒に満たされた満足感で心満たされて帰途についたのだから、ホーネックと今回のゲスト・コンマス、バラホスキー率いる紀尾井のアンサンブルの力量たるや只ものではないということだ。ちなみにアンコールだって奮っていて、エドワルド・シュトラウスのポルカ〈速達郵便〉とヨハン・シュトラウス2世のポルカ〈雷鳴と電光〉ということで、お決まりの〈蒼きドナウ〉も〈ラデツキー〉も無しで実に清々しいではないか。というわけで、マンネリに竿刺すホーネックの姿勢が随所にうかがわれる実に楽しく充実した〈ニュー・イヤー〉だった。

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