常任指揮者高関健が振る今シーズン最後のティアラこうとう定期は大入満員の大盛況。その理由は二曲目にあるのだが、プレトークで高関は他の曲にも力を入れているので楽しんでくださいとのこと。そしてスターターは、当日はモーツアルトの誕生日だということで滅多に実演では聞くチャンスはない交響曲第32番ト長調K.213。ホルンが4本もあり、更にトランペットがあるのにティンパニのない古典派としてはとても不思議な編成。だから聞きなれない音がするのが楽しかった。演奏のほうは高関にしては随分大らかな、威勢の良いモーツアルトであった。そして二曲目はマウリシオ・ラウル・カーゲルのティンパニとオーケストラのための協奏曲だ。話題性はともかくとして、とんでもない結末以外の部分も中々良くできた曲だという印象。様々なバチや素手で楽器を叩いたり擦ったり。おまけにメガフォンで声まで出す。何よりシティ・フィル首席ティンパニ奏者目等貴士の華麗なバチ捌きは実に華麗だった。肢体も実にしなやかで、打楽器奏者には秀でた身体能力が必要だということを改めて知った。最後は紙を張った6番目のティンパニに頭から突っ込んで終わり。この動きも実にキマッテいて役者としても中々である。突っ込んだまま動かない目等に高関が駆け寄るオマケまでついてなかなか楽しいエンターテーメントだった。休憩後はリヒャルト・シュトラウスの交響詩「ドン・ファン」作品20と「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」作品28の二本建て。これらはまあ豪快に良く鳴って気持ちが良かった。木管と金管、とりわけホルンの好演が目立ち現在のシティ・フィルの能力を余す所なく披瀝したと言いたいところだが、高関にしてはちょっと開放的過ぎていささか荒っぽかったようにも聞こえた。しかしその熱量は日頃の彼からは聞かれないものだったことはとても興味深い。
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