蛍のひとりごと

徒然に、心に浮かんでくる地唄のお話を、気ままに綴ってみるのも楽しそう、、、

はまぐり浴衣

2024年08月01日 | その他のよもやま
八月となりました。前回はお扇子のことを取りあげましたが、今度は相棒ともいうべき浴衣についてです。
夏となりますと、着物では単衣、うすものの頃合いとなります。
普段着物に縁がない方でも夏は浴衣を着る機会があることと思います。
花火には浴衣が似合います。長唄に菖蒲浴衣がありますが、こちらは、五月雨や、と歌い始めるように皐月の季節を表しています。
ちょうど袷から単衣になる衣替えでしょう。アヤメは柄として浴衣にマッチしますが、
ここに挙げたのは蛤(ハマグリ)のデザイン。はまぐり浴衣です。ユニークな意匠ですが、生地代で四十五万円ではねえ。


(篠原昌人)

一絃琴

2021年12月16日 | その他のよもやま
木曜日がやってきました。
担当の漂泊人です。
前回の朝顔日記で須磨琴が出てきました。
これは弦が一本しかない一弦琴と呼ばれる古いお琴です。
平安の昔、在原行平なる貴人が、浜辺に流れ着いた舟板に冠の緒を張って作ったのが初めとされ、今でも須磨琴保存会があります。
これは土佐にも伝わりました。
映像は、昭和三十六年の『土佐風土記』から取ったものです。
長さ三尺余り、幅四寸ほどの構造で1本の絹弦が張ってあります。
明治の中頃までは、これを肩に
背負い正に漂泊する流し芸人がいたようです。
一弦琴をよくした奏者に森田五郎という人物がいます。
名古屋の人だった森田は、一弦ならぬ二弦琴から応用して大正琴を作りあげました。
名古屋の大須観音境内には大正琴発祥の碑が建っています。
(文 篠原昌人)

もうすぐクリスマス

2021年12月13日 | その他のよもやま
昨日は、第二回楽歌踊謡【2月27日(日)@日本橋公会堂】の合奏練習でした。

合奏練習の帰り道にひとりのお弟子さんが「今日も小野先生のお着物姿素敵だったわね。
聖夜の森に誘われたわ…帯締めの房も蝋燭が灯っている様だったわね」とお話しされていて、
さすがお着物好きが集まる美緒野会。

昨日の小野先生のお着物はクリスマスをイメージされていらっしゃいました。

小野先生曰く、
花が咲き始める前に桜の着物を着る様に着物は季節感がとても大切で、
着物だけでなく帯や帯締め、半襟でその時々のテーマや気分をさりげなく演出していらっしゃるとのこと。

着物に知識のない(年中同じような服を着ている)私にとって、
その細かい気配りと日本人らしい楽しみ方にただただ感動しました。

小野先生のクリスマス気分と同様に、我が家もツリーを飾ったりサンタさんにお手紙を書いたりとクリスマス一色です。
6歳の娘はアドベントカレンダーのチョコレートを食べる前にお箏の練習を終わらせ、
サンタさんに向けて頑張ってるよ!アピールを欠かさず、
3歳の娘はトナカイのことを「ナカイさん」と親しみを込めて呼んでおり、
「はやくナカイさんにあいたいなぁ」と、もはや誰に会いたいのか分からない言葉が口癖になりました。

ナカイさんではなく、サンタさんが無事に来ますように。

(文:佐藤)


音曲と講談(2)

2021年12月10日 | その他のよもやま
本日は先週の続きを。
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【前半はこちら👇】
https://blog.goo.ne.jp/mayumi5312/e/0cdc22fede7d74015b5db3ef9ec6e3a5
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娘深雪は、一日会わねば千秋の思いにかられ、邸を飛び出してしまいます。

恋い漕がれる八十次郎を追い求めて旅に出ますが、次第に路銀に事欠くように
なり、ついに門付け芸人となります。三味を弾きながら歌うのは朝顔の唄で、
さすがに仕込んだ芸の確かさで行く先々で評判をとります。

講談ではゴゼになったとありますが、この挿絵を見ると鳥追のような感じもします。
松浦検校が曲を付けた地唄の「鳥追」ですね。
これは能楽から題材を得たといわれますが、秋の稲穂が実るころ、これをついばむ鳥を追い払う行事です。

打つ鼓、しどろに声たてゝ と歌詞にありますが、芸人衆を引き連れて賑やかに行いました。
また、賤しき業を忍び寝に、という文に鳥追稼業の職業的地位がうかがえます。

結末がどうなったかといいますと、目出度く二人は結ばれます。
長い苦労が報われるという、まあまっとうな一席ですが、今の高座では誰も先ず演りません。

この席を借りて読み終わりといたします。
(文:篠原昌人)

音曲と講談(1)

2021年12月02日 | その他のよもやま
こんにちは、今週から毎週木曜日に御目にかかります、私そうですね、
爪・撥漂泊人(つめばちさまよいびと)とでも申しておきましょうか。

日本の話芸に講談がありますが、私の好きなものでして一寸ここで一席。

国乱れて英雄現はれ、智者現はれて泰平に治まる、古へより智仁勇三徳と申しまするが、、、
と張り扇を叩いて始まるものです。
どんな凄い物語かと思ったら、何とこれは琴、三味線が登場する恋愛講談の冒頭の一節なんです。
題名は「朝顔日記」。

宮城八十次郎という武士が舟をしたてて宇治の蛍狩りに出かけたところ、屋形船より琴の調べがコロリンシャン。
奏でるのは深雪という娘で、なんと十八段浪返しという腕前。
どんなものかは想像するしかありませんが、琴は須磨琴という一弦琴でありました。
八十次郎の手に屋形船から女の被りものが落ちてくる、それを潮に八十次郎がその船に招かれます。
こういうところは上手くできていますナ。

ここで芸達者な宮城は三味線を弾くわけです。
〆露のひぬ間の朝顔を 照らす日影のつれなさに あはれ一村雨の~
朝顔のために一雨欲しいということでしょうか。
曲は催馬楽というものでした。

こちらも素人離れの音で、感服した深雪嬢は扇にその文句を書いて欲しいと所望します。
深雪の扇には朝顔が描かれてありました。
朝顔日記の発端となります。

イケ面宮城八十次郎に深雪はゾッコン一目惚れ、家出までして追いかけることになりますが、続きはまた来週。

(文:篠原昌人)