今年もインフルエンザワクチン接種の時期となった。
我々の施設でも10月にはいって連日、職員のワクチン接種が行われている、、、と言いたいところだが、なんと今年はワクチンを確保できなかったとかで接種の予定がすべてキャンセルされてしまったのだ。
いつ接種が開始されるのか、今のところなんのアナウンスメントも行われていないのが現状だ。
一説には、イラク戦争で頭が一杯だったブッシュ政権が、当初から懸念されていたワクチン不足に対しての対策を一切講じなかったことが原因であるとされるが、それにしてもこの全米でのワクチン不足騒動、一体全体何がどうなっているのやら、、、
ひょっとして、何者かが意図的にワクチン隠しでもやっているのだろうか?
ところで話は突然飛ぶが、僕は数年前にアメリカ屈指の医療機関をいくつか見て回ったことがある。
そこで目にした実際の医療は、僕が日本で見てきたあらゆる医療機関のそれをはるかに凌駕するものであった。
人材もシステムも、そして環境も、すべてが世界最高レベルであった。
当時アメリカのことなど何も知らなかった僕は、わずか数ヶ月間のアメリカ滞在期間中に、完全にアメリカの医療システムの崇拝者となっていたのである。
アメリカの医療システムの素晴らしさばかりが目に付き、一方日本のそれは旧態依然とし、ありとあらゆる箇所に歪が生じているように思えた。
僕が見たアメリカの病院では、入院患者は完全個室が当たり前であった。
全ての医療行為について、詳細なインフォームドコンセントがとられていたし、英語の覚束ない入院患者のために、あらゆる言語の通訳が24時間体制で常駐していた。
患者に何か医学的問題が生じると、それぞれの分野の専門医たちがすみやかに召集され診療にあたった。
日本では厚労省の認可が下りず使用できない世界標準の薬剤も日常的に使用され、治療における選択肢の幅を保証していた。もちろん日本におけるいわゆる“保険の縛り”なども一切存在しなかった。
とにかく、目に映るもの全てが新鮮だったし、医療の理想型がまさにそこにあるように思えてならなかったのである。
しかしアメリカに住むようになって、僕はアメリカの医療システムが実際は極めて多くの問題を抱えているということを知った。
僕が当時見学した病院は、実際には全米病院ランキングの上位5位以内に入る、いわゆる金持ち相手の非常に恵まれた病院ばかりであったのだ。そこに入院している患者は莫大な入院費用を支払うか、そうでなければ、治験プロトコールに参加し、医学の進歩のために貢献する道を選ばねばならないかのどちらかであった。
患者はインフォームドコンセントと称して毎回膨大なページ数の冊子をわたされ、内容に同意するならばサインをしろと迫られた。サインをしない限り治療は始まらない仕組みであった。
主治医は通常ならば一ヶ月、短い時なら2週間ごとにめまぐるしく交替した。
患者が肺炎を併発すれば呼吸器感染症の専門医が、吐血をすれば消化器の専門医が、皮疹が出現すれば皮膚科の専門医がそれぞれ担当となり、患者の周りの医者の数はどんどんと膨れ上がってゆくのが常であった。
当然、責任の所在が分散し、トータルで患者の状況を把握している医者が誰一人いないという状況が往々にして発生した。
もっと意地悪な見方をすれば、誰にも最終的な責任が及ばないようなシステムが実に巧妙に構築されていた、ともいえるかもしれない。
これが全米上位ベスト5の病院の現状であった。
それでも日本のシステムよりはずっとましじゃないか、という考え方も確かにある。
実際、日本の医療事情がアメリカ同様に、あるいはそれ以上に多くの問題を抱えているということなど今更多言を弄するまでもないからだ。
しかし、一旦そのランキング病院を離れると、アメリカには日本以上に劣悪な条件の医療機関が未だ山のように存在しているという事実に我々はほとんど気が付いていない。
世界最高の医療大国であるはずの当のアメリカですら、システムをまともに運営できるほどの潤沢な資金を持った医療機関はごく一部に過ぎないのだということを我々は知っておく必要がある。
以前も書いたがアメリカでは全人口の10%が医療保険を持っていない。あるいは、もし仮に持っていても、上記のような有数の医療機関で治療を受けられる人間はアメリカ人全体からみればほんの一握りに過ぎないのである。
アメリカでは毎年、インフルエンザによる死者が4万人を超えるという統計がある。
4万人である。
わが国では、まず絶対にありえない数字だ。
しかし、これが世界一の医療先進国アメリカの素顔でもある。
冒頭でも述べた通り、インフルエンザで毎年4万人超の死者を出すこの国では、今年、ワクチン不足が深刻な問題となりつつある。
アメリカの象徴であるディズニーランドがそうであるように、陰の部分を覆い隠して世界を席捲しようとする市場原理主義が今まさに、とてつもなく大きな矛盾をアメリカ社会に提示しているように思われてならない。
我々の施設でも10月にはいって連日、職員のワクチン接種が行われている、、、と言いたいところだが、なんと今年はワクチンを確保できなかったとかで接種の予定がすべてキャンセルされてしまったのだ。
いつ接種が開始されるのか、今のところなんのアナウンスメントも行われていないのが現状だ。
一説には、イラク戦争で頭が一杯だったブッシュ政権が、当初から懸念されていたワクチン不足に対しての対策を一切講じなかったことが原因であるとされるが、それにしてもこの全米でのワクチン不足騒動、一体全体何がどうなっているのやら、、、
ひょっとして、何者かが意図的にワクチン隠しでもやっているのだろうか?
ところで話は突然飛ぶが、僕は数年前にアメリカ屈指の医療機関をいくつか見て回ったことがある。
そこで目にした実際の医療は、僕が日本で見てきたあらゆる医療機関のそれをはるかに凌駕するものであった。
人材もシステムも、そして環境も、すべてが世界最高レベルであった。
当時アメリカのことなど何も知らなかった僕は、わずか数ヶ月間のアメリカ滞在期間中に、完全にアメリカの医療システムの崇拝者となっていたのである。
アメリカの医療システムの素晴らしさばかりが目に付き、一方日本のそれは旧態依然とし、ありとあらゆる箇所に歪が生じているように思えた。
僕が見たアメリカの病院では、入院患者は完全個室が当たり前であった。
全ての医療行為について、詳細なインフォームドコンセントがとられていたし、英語の覚束ない入院患者のために、あらゆる言語の通訳が24時間体制で常駐していた。
患者に何か医学的問題が生じると、それぞれの分野の専門医たちがすみやかに召集され診療にあたった。
日本では厚労省の認可が下りず使用できない世界標準の薬剤も日常的に使用され、治療における選択肢の幅を保証していた。もちろん日本におけるいわゆる“保険の縛り”なども一切存在しなかった。
とにかく、目に映るもの全てが新鮮だったし、医療の理想型がまさにそこにあるように思えてならなかったのである。
しかしアメリカに住むようになって、僕はアメリカの医療システムが実際は極めて多くの問題を抱えているということを知った。
僕が当時見学した病院は、実際には全米病院ランキングの上位5位以内に入る、いわゆる金持ち相手の非常に恵まれた病院ばかりであったのだ。そこに入院している患者は莫大な入院費用を支払うか、そうでなければ、治験プロトコールに参加し、医学の進歩のために貢献する道を選ばねばならないかのどちらかであった。
患者はインフォームドコンセントと称して毎回膨大なページ数の冊子をわたされ、内容に同意するならばサインをしろと迫られた。サインをしない限り治療は始まらない仕組みであった。
主治医は通常ならば一ヶ月、短い時なら2週間ごとにめまぐるしく交替した。
患者が肺炎を併発すれば呼吸器感染症の専門医が、吐血をすれば消化器の専門医が、皮疹が出現すれば皮膚科の専門医がそれぞれ担当となり、患者の周りの医者の数はどんどんと膨れ上がってゆくのが常であった。
当然、責任の所在が分散し、トータルで患者の状況を把握している医者が誰一人いないという状況が往々にして発生した。
もっと意地悪な見方をすれば、誰にも最終的な責任が及ばないようなシステムが実に巧妙に構築されていた、ともいえるかもしれない。
これが全米上位ベスト5の病院の現状であった。
それでも日本のシステムよりはずっとましじゃないか、という考え方も確かにある。
実際、日本の医療事情がアメリカ同様に、あるいはそれ以上に多くの問題を抱えているということなど今更多言を弄するまでもないからだ。
しかし、一旦そのランキング病院を離れると、アメリカには日本以上に劣悪な条件の医療機関が未だ山のように存在しているという事実に我々はほとんど気が付いていない。
世界最高の医療大国であるはずの当のアメリカですら、システムをまともに運営できるほどの潤沢な資金を持った医療機関はごく一部に過ぎないのだということを我々は知っておく必要がある。
以前も書いたがアメリカでは全人口の10%が医療保険を持っていない。あるいは、もし仮に持っていても、上記のような有数の医療機関で治療を受けられる人間はアメリカ人全体からみればほんの一握りに過ぎないのである。
アメリカでは毎年、インフルエンザによる死者が4万人を超えるという統計がある。
4万人である。
わが国では、まず絶対にありえない数字だ。
しかし、これが世界一の医療先進国アメリカの素顔でもある。
冒頭でも述べた通り、インフルエンザで毎年4万人超の死者を出すこの国では、今年、ワクチン不足が深刻な問題となりつつある。
アメリカの象徴であるディズニーランドがそうであるように、陰の部分を覆い隠して世界を席捲しようとする市場原理主義が今まさに、とてつもなく大きな矛盾をアメリカ社会に提示しているように思われてならない。
アメリカの医療システムに関する記事、興味深く拝見致しました。
名前が変わっているので憶えているのですが、Mayo clinicなどが有名ですよね。
医療システムに関しては一概にアメリカがより、日本がよい、とは言えないということですね。
以前に満足な医療を受けることができない人の唯一の手段が救急車なので、子供が熱を出しただけで救急車を呼ぶということをニューズ番組で見たことがあります。
システマティックに物事に対応していくはずのアメリカでインフルエンザのワクチンが足りないというのは少し驚きです。ご指摘の通りブッシュ政権の偏った政策の弊害だと思います。
コメントありがとうございます。
そうですね。
貧富の差をなくせなどとナイーブなことを言うつもりはありませんが、より現実的な、共生を目指す世界(単なるばら撒きでない)を僕達は志向すべきではないかと思います。
o_sole_mioさん
こんにちは。
Mayo Clinic、行きました。約二ヶ月間あそこで研修しました。しかも冬のもっとも寒い時期に、、、
日中でもマイナス20度とかの世界でした、、、
確かにあそこを見ちゃうと他の病院は見られたもんじゃないですね。
ああいう病院では、世界中の大富豪がバンバン寄付をしてくれるので、財政的に本当に潤ってるんですね。
僕がいた時期も、大富豪の寄付ででっかいビルが建設中でした。
ブッシュ大統領ご一家も揃ってMayoの患者です。
結局、問題はカネってことになりますか。。。
ですからもし、日本の医療システムをもっとまともに動かそうとするのならば、それこそ患者負担分を引き上げるしかないのかもしれませんね。
日本でも、医療費の高騰ゆえに、いずれアメリカを見習って自由診療を認めるふうな方向性にあるような気がします。いろいろな矛盾を孕みつつ、果してどうなっていくのでしょうかね~。ところで、ブッシュは少し形勢が悪くなってきているようですね。
こんにちは。
外科医が皮膚科コンサルトをするのは、単純に皮膚科なんて興味ないという部分もあるのかもしれませんが、usuhsさんの指摘するとおり、特にアメリカにおける専門医のコンサルト制度は明らかに訴訟を視野に入れています。
僕が、実際経験した例では、
たとえば、患者さんの意識状態が悪くなると、たいだい神経内科や脳外科の医者が診察を依頼され、専門医として、現在の状況をどのように判断するかをカルテに記載します。ここでは専門医が診察したという事実をカルテに残すことがきわめて重要です。
そして、もし患者さんの家族が医療行為に対し不信感を抱いていると考えられた場合には、主治医がその旨を看護スタッフに伝えます。看護スタッフは患者さんの家族を別室に呼びだし、同時に脳外科医、神経内科医、精神科医、主治医、心理学者、倫理学者、カウンセラー、看護婦、薬剤師、などありとあらゆる専門家を集めます。そして家族を取り囲んで、あるものは家族の手を握りながら慰めの言葉をかけ、あるものは患者さんの状況がいかに必然的なものであるかをとうとうと説明するのです。
ミーティング終了後、主治医は病棟に頻繁に電話し、患者家族の状況を確認します。どうやら家族が納得したようだという情報がはいると、主治医はほっと肩をなでおろし、ミーティングに参加してくれた専門家達にお礼のメールを打つのです。
はっきりいって、こんなもんです。
とにかく、医者にとっては、訴えられるのが一番いやなわけですから訴えられないためにはなんだってするのです。
ただし、医者側の名誉のために言っておきますが、実際に訴訟になった例で、本当に病院側にミスがあったと認められる例はほとんどないと担当者が言っていました。
嘘か本当かは知りませんが、、、
ところで、ブッシュが劣勢ではないかことですが、こっちで見ている限り、ブッシュはまだまだ優勢のように思えます。果たして、大統領選選挙どうなるのでしょうか、、、
結局、今年はワクチン接種ができないかも知れず。となるとインフルエンザの犠牲者がまた一段と増えそうですね。
お年寄りとちっちゃな子供さんぐらいはなんとかしたほうがいいのでしょうが、、、大統領選挙のごたごたもあるし、一体どうなるんでしょうね。
あーこわい。