現代社会は都市生活になっている。人工物で囲まれる生活である。そんなことに何か問題があるとは考えもしないが、徐々に人間の健康に影響を与えているかもしれない。
養老孟司さんは、このような都市中心でしかない社会を脳化社会と位置づけ、都市生活者に田舎での生活を取り戻すようにと主張している。
養老さんは解剖学者であるから医者でもあるが、「医学の父」と言われるヒポクラテスは2400以上前に、以下の言葉を残している。
「人間は、自然から遠ざかるほど、病気に近づく」
現代人は、はっきりとはしないけれど、シャキッとしないとか、気力がわかないとか、疲れ切っているなど皆同じような感覚を持っているのではないかと思います。憂鬱になり、鬱病なのではないかということもあるでしょう。
最近の私自身も、なんだか昼間でさえもあくびが出て、ぼけっとした感じです。これを健康と呼べるかというと、呼べないように思います。そこで病院で検査しても数値的には悪い結果にならないことも多いと思います。それなのになんとなく体調不良の感じがあって、しょうがないので健康ドリンクやサプリメントをとったり、運動不足だとして、ウオーキングしたりします。食事に気を使って、炭水化物を少なくするなど。
ヒポクラテスは次のような言葉も残しています。
「人間がありのままの自然体で、自然の中で生活すれば、120歳まで生きられる」
ちょっと体調が悪ければ、解熱剤や胃腸薬を飲むのは、我々の姿です。眠れなければ睡眠導入剤です。我が家にも置いてあります。僕は2年半前に心不全を患ったので、血圧の薬を飲んでいます。そういえば母親は橋本病ですから、なんだか多くの薬を飲んでいます。
不調の数だけ、対処療法的な薬を飲むわけですから、薬漬けの生活になるのも当然です。不調に対する多少の緩和にはなるでしょうが、その一方で、薬が原因で新たな不調が生じ、その不調の対処のために新たな薬が処方されたりします。
こういうのは医原病の一種でしょうが、医療信仰、病院依存は止まりません。ひょっとして、コロナも同様なのではないかと思うところはありますが、それについては別の機会に。ちなみにイバン・イリイチはこういう医療依存を医療化と名付けていて、現代社会を批判しています。
さて自然との関係を損なうことで生じている、先に挙げたような医療との関係性で気づきづらい病気のあり方を自然欠乏症候群と言います。病気もまた人間と包括的全体論的な自然との関係で考えなければならないというスタンスです。科学が発達しているにしても、この人間の健康と自然の関係を視野に入れるのを忘れているように思うのです。