私達が、現実と呼ぶもので、「現実」とは五感に依存しており、
五感がもたらす感覚は、それ自体はおおよそ人類共通であり、
その時点では、現実にズレはないと言えるでしょう。
しかし人間は、その認識過程において、こうした感覚刺激を符合化し、
そこに個別の感情や思考を加える事で、各々独自の正当な現実を
作り出していきます。
そして生まれた個々の「現実」の平均が、即ち一般的に言われる「現実」
とされるものであり、
人類、国家、地方、家族とその社会が狭まるにつれ、その「現実」は
普遍性を失い限定的になります。
即ちそれは、それぞれの共同体構成員の合意の上で成り立つ
「合理的現実」であり、いずれもこれこそ「ありのままの現実」或いは、「絶
対普遍の現実」であると言うことは出来ません。
他界に纏わる伝承の数々は、こうした夢のリアリティーが積み重なって
結晶化したものではないでしょうか。
我々は、どちらかと言えば、幸せになるためよりも、幸せだと人に思わせ
る為に四苦八苦しているのです。
とも考えられると思います。
「常世の世界」「他界」は集合的無意識として、そうした現実を越えたリアリ
ティーの世界、なのだと思います。