素敵に落ち着いた静かな佇まいのお店の前でユーちゃんは少し怒った顔で立っていた。
ユーちゃんあちこち連絡してたみたいだから、誰かほかにもいるかと思って・・・ごめん。
先生は、お前ら3人で来い!って言ったのか・・・なにせ再会できてなんだかホッとした。
末尾の3人。グダグダ延々卒業先延ばしにしてた出席番号末尾の3人。
そんなんだからなんだか気が合ったのかも・・・ね。
魅力的な店内を通過して裏に出ると静まり返った緑の密度の濃い庭
猛暑のただ中をすっかり忘れる涼やかな空気が流れる
雨に濡れて灰色の庭を進むも
なんとなくその先に足を踏み入れるのを躊躇する。
いつからお守りしてるのか、ちいさいけれどその強情そうな
迫力の顔の狛犬を眺めてみたり
外からギャラリーの中の様子を伺ってみたりなんやかんや時間を稼いで
まるで学校に行きたくない子どものように
ホンの数歩の道のりを進む。
だけどね、中に入らなきゃダメだよね。入ろう。
意を決して扉をあけると
すぐに先生の遺影が飾られていた。
一瞬立ちすくむも
でも、ただの写真のふりをしてニコニコ芳名帳に名前を書き込む。
いくつもの月の絵が、緑の借景の中にふんわりやさしく並んでた
定年後インド行ってきたんだって
定年なんて1mmもしたくなかったんだよね。
全然だよね。
その昔長沢節先生がしつっこく言ってた。
芸術家は、結婚なんかしちゃダメ!まして子どもなんて絶対ダメ!
絵を描いていたかったらパトロンを作らなきゃ!って
食うために創造物を構築するって残酷すぎる。
難しいよね。
そう考えればクルクルパーの生徒の相手は
もしかしたら楽しいかも。
描きたい絵を自由に、想いを込めて
まだまだ描き足りてないのに
期限を神様に提示される。
まだまだやりたいのに、まだまだ全然なのに時間がない。
随分つらそうな筆運びの作品があって
それでも必死に渾身の力を振り絞って描いたんだろね。
意識が遠のくほどの苦痛と闘いながら描いたんだろうか。
絶対諦めるな!絶対負けないってメッセージを込めて。
単なる思いつきで、
幼稚園児が大学入っちゃったみたいなアタシ
他の生徒には随分冷ややかな眼で見られたこともあったけど
先生は、きちんと自分と対峙すること教えてくれた。
ヘタでいいんだ‼️うまくなんかなろうとすんな‼️
ヘタを鍛えろ‼️って
延々とくどくど、妙に説得力ある逸話を混ぜ混ぜ話してくれたっけ。
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