リヨンで会うもう一つの家族、日仏家族が、「もし列車がなかったら、ディジョンまで車で迎えに行くわ。安心して。そう遠くはないのよ」と言ってくるではないか。
これは、どれほど私を喜ばせ、安心させたであろう。
まさか、まさか、であった。
本来ならリヨンで宿泊する家族から提案でも不思議ではないのだが、彼らはパリから数年間の赴任でリヨン在住で、車を持っていないのだった。
しかし、ギリギリのところで、「ディジョンーリヨン間の列車があるから今すぐ予約を。」と、連絡をしてきたのが、この宿泊する予定の家族からであった。
彼らとしては、本来自分たちがするべきところ?を別の家族が迎えに行くとなるより、予定通り列車で来てもらう方が、立場が守られる?こともあったのかもしれない。
日仏家族には申し訳なかったが、列車の予約ができたから、と断ることになった。それでもこの申し出は、忘れることのできないものになった。
あっという間に列車の時間が近づいてきたので、お暇をする。
さて、今日はリヨンへ行く。
エスカレーターは、いつもディジョン駅と自宅の送迎を必ずしてくれる。
今回も娘さんの家を出発し、ディジョン駅のホームまで送ってくれた。
実は私はまだ昨夜耳を引っ張られたことが少し残っていたが、列車の中に座り、窓からホームを見たら、エスカレーター夫妻がいる。しかもムッシュが奥さんに「ハンカチを出せ」と言い、2人でハンカチを振って見送ってくれるではないか。
このユーモアと、やさしさに改めて、ほろりとさせられた。
そしてリヨンへ向かう列車の中で、思い返していた。
おじさんは、「リヨン駅から、どうやってその家に行くのだ?」
私:「タクシー」
「なんだって!!迎えに来てくれないのか!!タクシーだなんて」
ありえないといった様子だった。いつもこのように心配してくれるのだ。
やはり、怒りんぼだけど、優しいひとだ。どこに異国の友人のためにここまで言ってくれる人がいるだろうか。
つまり、耳を引っ張ったというのは、家族のように思っているからではないか、と思いなおすことができたのである。
家族のように私に怒り、家族のように心配してくれるのだ。このエスカレーターのおっちゃんは。
愛称「エスカレーター」からわかるように、京都駅のエスカレーターでの出会い、たった5分の出会いからなのである。