みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

1152「あなた、だれ?」

2021-11-04 17:37:45 | ブログ短編

 喫茶店(きっさてん)で友達(ともだち)と待(ま)ち合わせをしていた彼女。ちょっと早めに来てしまったので、所在(しょざい)なさそうに店内(てんない)を見回していた。そんな時、店(みせ)に入ってきた男が彼女に声をかけた。
「ご一緒(いっしょ)させてもらってもいいですか?」
 彼女は、「何で?」と思った。他にも空(あ)いている席(せき)はある。なのに相席(あいせき)って…。彼女が答(こた)えるより前に、男は彼女の前の席にスルリと腰(こし)を下ろした。
「この人、何なのよ」彼女は心の中で呟(つぶや)いた。
 男はにっこり微笑(ほほえ)むと、彼女の名前(なまえ)を呼(よ)んだ。彼女は驚(おどろ)いた。どうして自分(じぶん)の名前を知っているのか? 彼女には、見覚(みおぼ)えのない男だ。男は、彼女に小さな小箱(こばこ)を差(さ)し出して、
「これ、預(あず)かってもらえませんか?」
 彼女は警戒(けいかい)しながら答えた。「困(こま)ります。だって…。あなた、誰(だれ)なんですか?」
 男は残念(ざんねん)そうに、「あれ…。忘(わす)れちゃったんですか? この間(あいだ)、会ったじゃない」
「いいえ。あなたとは、会ったことなんかないです」
 男は一瞬(いっしゅん)考えて、「ああ…、そうか。君(きみ)と初めて会うのは明日(あした)だったね。ごめん。今のは忘れて。これも、まだ渡(わた)すのはやめておくよ」
「えっ? どういうことですか。明日、会うなんて…。どうしてそんなことが――」
「僕(ぼく)には分かるんだよ。明日、君に会えるのが楽(たの)しみだ。じゃ、また」
 男は席を立つと、店を出て行ってしまった。彼女はもやもやした気分(きぶん)で見送(みおく)った。
<つぶやき>彼女の知らないところで何かが起きている。箱の中には何が入っているのか?
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