「そう、可哀想(かわいそう)に…。辛(つら)いわよね」千鶴(ちづる)が呟(つぶや)いた。隣(となり)には柊(ひいらぎ)あずみがいて、
「いつかは通る道よ。アキも大人(おとな)になろうとしてるんだわ」
千鶴が不満(ふまん)そうに、「あなたはどうしてそんなに冷(つめ)たい言い方しかできないの?」
「はぁ? なに言ってるのよ。私は、そんなつもりじゃ――」
いつもの口論(こうろん)が始まる前に、月島(つきしま)しずくが口を挟(はさ)んだ。「それで、見つかりました?」
千鶴が答(こた)えて、「ええ。父親がいる研究所(けんきゅうしょ)に閉(と)じ込められているわ」
「でも、驚(おどろ)いたわ」あずみが言った。「姿(すがた)を変えられる能力者(のうりょくしゃ)がいたなんて…」
水木涼(みずきりょう)が突然(とつぜん)声をあげた。「えっ! あれって、つくねじゃなかったのか?」
しずくはそれに答えて、「ええ。匂(にお)いが違(ちが)ってたから、すぐに分かったわ」
「会ったのか? 何でその時、捕(つか)まえなかったんだよ。そしたら、こんなことには…」
「それは、そうなんだけど…」つくねは言葉(ことば)を濁(にご)して、「それで、偽者(にせもの)の方は?」
「それが…」千鶴は申し訳(わけ)なさそうに、「どこへ行ったのか、見つけられなかったわ」
「別の姿になったんじゃ…」今まで黙(だま)っていた日野(ひの)あまりが呟いた。
あずみがそれを受(う)けて、「きっとそうだわ。神崎(かんざき)の研究所に戻(もど)ったんじゃないの?」
「違うと思うわ」突然、川相初音(かわいはつね)が現れた。「それらしいヤツ、見たわよ」
「あなた…」あずみは初音に詰(つ)め寄って、「学校休(やす)むんなら、ちゃんと連絡(れんらく)しなさい」
<つぶやき>無断欠席(むだんけっせき)はダメですからね。でも、初音はどこへ行っていたのでしょうか?
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