とある大学(だいがく)の教授(きょうじゅ)が、生徒(せいと)を前にして講義(こうぎ)をしていた。議題(ぎだい)は鬼(おに)についてだ。
「みなさんは鬼の話しは知っているかな? 古今東西(ここんとうざい)、いたるところで伝承(でんしょう)が残(のこ)っている。みなさんがよく知っているところでは、昔話(むかしばなし)にある桃太郎(ももたろう)の鬼退治(たいじ)ではないかな?」
生徒の一人が答(こた)えた。「あたし、子供(こども)のころ絵本(えほん)で読みました」
教授はうなずいて、「なるほど…。では、そのお話は、実際(じっさい)にあったことなのか?」
別の生徒が、「そんなの作り話ですよ。鬼なんて存在(そんざい)するわけがない」
「本当(ほんとう)にそうなんだろうか? 田舎(いなか)の方のお寺(てら)とか神社(じんじゃ)では、実際に鬼が祀(まつ)られていることがある。そこでは、鬼のミイラとか角(つの)とかが受け継(つ)がれていると――」
「それって、作り物でしょ。それか、別のものなのに鬼のものと勘違(かんちが)いしたとか…」
「確(たし)かに、そういうことはあったかもしれない。では、鬼とはどういうものなのか? 実際に存在していないのか? ひょっとすると、鬼は人間(にんげん)の中に紛(まぎ)れ込んでいるのかも…」
「先生、それはないでしょ。鬼なんか見たことないですよ」
「私は、一度だけ見たことがあります。それは、私の妻(つま)を怒(おこ)らせてしまったとき…」
「それって、鬼嫁(おによめ)ってことですか? 笑(わら)えますけど、鬼とは関係(かんけい)ないと思います」
「いや。実際に、妻の頭(あたま)に角(つの)が生(は)えていたんだよ。それも、二本も…。これは、鬼族(ぞく)が存在している証拠(しょうこ)だと思うんだ。ここは、みんなで検証(けんしょう)したいと――」
<つぶやき>そんなことしたら、奥(おく)さんに怒られちゃいますよ。でも、鬼っているのかなぁ?
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