ベッドに寝(ね)かされているハル。真っ白なベッドは赤く染(そ)まっている。アキは自分(じぶん)の能力(ちから)を使って傷(きず)を治(なお)そうとしていた。だが思うようにいかなくて、あせればあせるほど能力(ちから)を発揮(はっき)できなくなっていた。
水木涼(みずきりょう)と日野(ひの)あまりは為(な)す術(すべ)もなく見守(みまも)るしかなかった。そこへ、月島(つきしま)しずくがやって来た。しずくは驚(おどろ)いた様子(ようす)もなく、ベッドに近づくとハルの肩(かた)に手を当てた。すると、ハルが目を開けた。ハルは、しずくを見つめてかすかに微笑(ほほえ)んだ。
しずくは涼たちに外へ出るように促(うなが)した。涼は懇願(こんがん)するように、
「何とかならないのかよ。お前の能力(ちから)で――」
しずくは静(しず)かに答(こた)えた。「これは運命(うんめい)よ。その時が来ただけ…」
「その時って…。何だよそれ。わけ分かんないよ」
「行こう。ここは、二人だけにしてあげましょ。その方がいいわ」
三人は部屋(へや)を出て行った。アキは泣(な)きながらハルに話しかけた。
「ハル、ダメだよ。死(し)なないで…。あたしが、今、治してあげるから…」
アキは、手をハルの傷口(きずぐち)に向けた。アキはひとり言(ごと)のように呟(つぶや)いた。
「集中(しゅうちゅう)よ。集中するの。あたしならできる。ひとりでもやれるんだから…」
ハルは、アキの手をつかんだ。そして、慈愛(じあい)に満(み)ちた顔でアキを見つめた。
<つぶやき>このまま死んでしまうんでしょうか? 助(たす)けることは誰(だれ)にもできないのか…。
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