みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

1153「演奏会」

2021-11-06 17:41:56 | ブログ短編

〈パシャパシャ チャポン ピチャピチャ ポンポン〉
 お風呂(ふろ)に入っているパパが、水面(すいめん)を指(ゆび)で軽(かる)く叩(たた)くと面白(おもしろ)い音がした。それを見ていた娘(むすめ)は、嬉(うれ)しそうに笑顔(えがお)になった。パパは十本の指を使って、まるでピアノを弾(ひ)くようにやってみせる。娘はますます喜(よろこ)んで、自分(じぶん)でもやってみせる。
 二人はまるで会話(かいわ)でもするように、合奏(がっそう)でもするように、時間を忘(わす)れて楽しんだ。
〈パシャン ボン ピチャン バン ポヨン チャポン ポワーン ピチャピチャ〉
 外(そと)からママの声がした。「ねぇ、いつまで入ってるの? 早く出なさい」
 二人は顔(かお)を見合(みあ)わせて、くすくす笑(わら)って返事(へんじ)を返した。
 風呂から上がると、パパはビールを飲(の)み始めた。ママは娘に言った。
「そろそろ、パパとお風呂に入るのは止めようね。もう、一人で入れるでしょ」
 娘はちょっと寂(さび)しそうな顔をしたが、「うん、そうする」とうなずいた。
 娘が眠(ねむ)りにつくと、パパはママに愚痴(ぐち)をこぼした。
「あぁ、もう一緒(いっしょ)に入れないのかぁ。なぁ、まだいいじゃないか。あと少し…」
 ママが答(こた)えた。「もう、パパは甘(あま)やかしすぎなの。分かったわ。来月の誕生日(たんじょうび)までね」
「ありがとう。じゃあ、素晴(すば)らしい演奏会(えんそうかい)が開(ひら)けるね。ママも一緒にどう?」
<つぶやき>これは絶対(ぜったい)に脚下(きゃっか)ですよ。父親にとっては、娘って特別(とくべつ)なのかもしれません。
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