みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

1164「化けもの現る」

2021-11-28 17:35:19 | ブログ短編

 とある田舎(いなか)の寂(さび)れた村(むら)。その村に一軒(けん)だけある小さなお店(みせ)に、怪我(けが)をした若者(わかもの)が飛(と)び込んで来た。彼は喘(あえ)ぎながら言った。
「助(たす)けてくれ。化(ば)けものが…化けものが……」
 彼はそのまま意識(いしき)を失(うしな)った。すぐに警察(けいさつ)に連絡(れんらく)がいった。その若者は村の者ではなかった。何のためにこの村にやって来たのか? これは謎(なぞ)である。
 若者は店の奥(おく)の座敷(ざしき)に寝(ね)かされた。だが、救急車(きゅうきゅうしゃ)が到着(とうちゃく)すると、若者の姿(すがた)は消えていた。座敷には血(ち)の跡(あと)が筋(すじ)になって残(のこ)っていて、まるで引きずられたようだ。縁側(えんがわ)の戸(と)が開いていたので、そこから外へ出たのか? 縁側の外は山に続く林になっている。警察が村人の協力(きょうりょく)をえて周りを捜索(そうさく)したが、何の手掛(てが)かりも見つけられなかった。
 本当に化けものがいたのか? それとも、何かの犯罪(はんざい)に巻(ま)き込まれたのか…。こんな田舎の村で、こんな不可解(ふかかい)な事件(じけん)が発生(はっせい)すると誰(だれ)が想像(そうぞう)できただろうか。
 翌日。警察は村の周りに捜索範囲(はんい)を広げた。すると店から少し離れた場所で、それは見つかった。その異様(いよう)な光景(こうけい)は駆(か)けつけた人たちを震(ふる)え上がらせた。
 小さな小屋(こや)の裏手(うらて)、森に面(めん)したところに、掘(ほ)り返されたような跡(あと)があった。その中心辺りに、人間の手だけが土から突(つ)き出ていた。すぐに掘り返されたが、土の中にあったのは右腕(みぎうで)だけだった。他の部分(ぶぶん)はどこへいったのか。化けものに食べられてしまったのか?
 この事件は、今だに未解決(みかいけつ)である。それ以来(いらい)、同様(どうよう)の事件は起(お)きていない。
<つぶやき>めちゃくちゃ恐(こわ)いヤツじゃないですか。もう、こういうの止めてくださいよ。
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コメント
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