みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0014「いつか、あの場所で…」

2024-12-05 16:32:57 | 連載物語

 「おまつりの夜」1
 もうすぐ夏祭り。七夕まつりが始まる。私は初めてだから、わくわくしている。いつもは静かなこの町も、この三日間は騒がしくなるんだって。
 商店街には大きな笹飾りが取り付けられて、屋台がいっぱい並ぶの。いろんなイベントもあるんだって。のど自慢とか、ヒーローショー、それに仮装行列。青年団や商店街の人たちが企画したゲームコーナー。聞いているだけで楽しくなってくる。最後の夜には花火が上がるんだって。海の花火! 私は一度も見たことがない。きっと奇麗なんだろうなぁ。
「ねえ、さくらはお祭り見に行く?」ゆかりが聞いてくる。私は、
「どうしようかな…」曖昧に答える。
 実は、一緒に行ってくれる人がいないんだ。パパもママも町内会の手伝いで、私の相手をしている暇はない。一人で行くのは…。
 私、方向音痴なんだ。この町には私の知らない場所がいっぱいある。知らない所に一人で行くのが怖いの。前に住んでいた所で迷子になったことがある。一人で泣きながら歩いていた。道を一本間違えただけだったのに…。
 親切なおばさんが私を交番まで連れて行ってくれた。私が泣いてばかりで、何も話さなかったから…。
 お巡りさんは私にお菓子をくれた。私は、それでやっと落ち着いた。お巡りさんに住所を聞かれたんだけど、まだ引っ越したばかりだったから覚えてなくて。でも、近所にあるお店を覚えていたから、そこまで連れて行ってもらって…。
 なんとか家にたどり着いて、ほっとした。ママの顔を見たらまた泣いちゃった。それ以来、知らない場所に一人で行けなくなってしまったんだ。恥ずかしいけど…。
「私も行きたいんだけどなぁ」
「ゆかりは行かないの?」
「家の手伝いしないといけないから。親戚の人とか、お客さんがいっぱい来るの。ご馳走作るの手伝ったり、いろいろあるのよ。兄ちゃん達はどうせ遊びに行っちゃうし。弟は、あてにならないから」
 …大変なんだ。と思いつつ、ゆかりが料理するところを想像できなかった。
「料理、出来るの?」思わず聞いちゃった。
「失礼しちゃうなぁ。私だって出来るわよ、それくらい」…そうなんだ。
「私も手伝ってあげようか? どうせ一人だから、暇なんだ」
 実は、ゆかりが料理するのを見てみたかった。ちょっとした好奇心。ゆかりには内緒だけど…。
<つぶやき>人それぞれ、得手不得手があるものです。得意なことを極めましょう。
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