みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0394「できない」

2018-11-29 18:52:44 | ブログ短編

 賞金(しょうきん)百万円をかけたサバイバルゲーム。最短(さいたん)時間で目的(もくてき)の場所へ到達(とうたつ)しなければならない。途中(とちゅう)にはいろんな罠(わな)や刺客(しかく)がひそんでいた。ほとんどのチームが失格(しっかく)していくなか、春子(はるこ)たちは最(もっと)も早いタイムで進んでいた。
 だがこのゲーム、そんなに甘(あま)くはなかった。進につれ仲間(なかま)はどんどん脱落(だつらく)していき、残(のこ)るは春子と有紀(ゆき)の二人だけ。そして今、チームリーダーの春子も、罠にはまり身動(みうご)きが取れなくなった。春子は口惜(くや)しそうに有紀に言った。
「後(あと)はお願い! 絶対(ぜったい)、賞金を取るのよ。そのために私たち頑張(がんば)ってきたんだから」
 有紀はめちゃくちゃ戸惑(とまど)っていた。今まで自分(じぶん)から何かをしたことがないのだ。いつも誰(だれ)かの後をついて行くだけ。今回だって、春子がいたからここまで来れたのだ。
「あ、あたし、一人で? ダメだよ。あたしには無理(むり)。できないよぉ」
「そんな泣(な)き言(ごと)言わないで。大丈夫(だいじょうぶ)。あなた一人でもできる。自分を信じなさい」
「だって…。どうすればいいか、分かんないよ。絶対、できない。あたしになんか…」
 春子は語気(ごき)を荒(あら)げて、「アンタね。優勝(ゆうしょう)できなかったら絶交(ぜっこう)よ。時間が無(な)いの。走れ!」
 有紀は迷(まよ)いながらも走り出す。だが、春子は呼(よ)び止めて、
「そっちじゃない! 戻(もど)ってどうすんのよ。もう、しっかりしてよ。お願いだから」
「ごめん。あたし、頑張るから。絶交なんて言わないで」
<つぶやき>火事場(かじば)の馬鹿力(ばかぢから)じゃないですけど、ちゃんとゴールにたどり着けたのかな?
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