「ねえ。ママは、いいもん? わるもん? どっちなの?」
幼稚園(ようちえん)に通(かよ)い始めた男の子が、迎(むか)えに来たママに訊(き)いた。ママは笑(わら)いながら答(こた)える。
「そうねえ、ママは、いいもんかな。ヨシ君(くん)は、どっち?」
「ボクも、いいもんだよ。じゃあ、わるもんはパパだね」
「えっ? パパがわるもんなんて、かわいそうだよ。パパも、いいもんにしてあげないと」
「でも、いいもんだけじゃつまんないよ。ぜんぜんおもしろくない」
二人は家に帰るまでこの話で盛(も)り上がった。家の前まで来ると、叔父(おじ)さんが待っていた。
男の子は叔父さんにも訊いた。「ねえ、おじさんは、いいもん? わるもん?」
叔父さんはしばらく考えていたが、「君は、何をもっていいもんとわるもんを区別(くべつ)しようとしているのか? 具体的(ぐたいてき)に基準(きじゅん)をハッキリさせてくれ」
男の子はキョトンと首(くび)を傾(かし)げる。ママは見かねて、
「ちょっと、なに真剣(しんけん)になってるのよ。相手(あいて)は子供(こども)なんだから」
「姉(ねえ)さん、彼はもう立派(りっぱ)な子供だ。適当(てきとう)なことは言えないよ」
叔父さんは男の子に向き直(なお)ると、「しばらく熟慮(じゅくりょ)が必要(ひつよう)だ。次まで待ってくれないか?」
ママは呆(あき)れて、「次に来るころには、そんなこと忘(わす)れてるわよ」
<つぶやき>子供にとって、関心事(かんしんごと)は目まぐるしく変わるものです。だから面白(おもしろ)いです。
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