これは彼に備(そな)わった不思議(ふしぎ)な能力(のうりょく)なのか…。運命(うんめい)といった方がいいのかもしれない。彼の身(み)に起(お)きることが、世界(せかい)に影響(えいきょう)を与(あた)えてしまうのだ。
これは信じ難(がた)いことだ。例(たと)えば、彼が風邪(かぜ)をひくと、世界のどこかで病気(びょうき)が蔓延(まんえん)してしまう。彼が怪我(けが)をすると、世界のどこかで大惨事(だいさんじ)が起きる。といった具合(ぐあい)だ。普通(ふつう)に考えれば、それは偶然(ぐうぜん)の出来事(できごと)だと笑(わら)って言えるだろう。だか、数え切れないほど同じようなことが起きてしまうと、それはもう必然(ひつぜん)としか思えない。彼にとってはこれが現実(げんじつ)なのだ。
だから彼は、最善(さいぜん)の注意(ちゅうい)を払(はら)い生活(せいかつ)をしていた。不必要(ふひつよう)な外出(がいしゅつ)はなるべく控(ひか)え、出かけるときは防疫(ぼうえき)につとめる。あせらず慌(あわ)てず余裕(よゆう)を持って目的地(もくてきち)に向かう。事故(じこ)にあうことを未然(みぜん)に防(ふせ)がなくてはならない。誰(だれ)もが大変(たいへん)に思うことばかりだ。でも、彼にとってはこれは日常(にちじょう)なのだ。別(べつ)に苦(く)にもならないようだ。
そんな彼に、とんでもないことが起きてしまった。それは、女性からの告白(こくはく)だ。
彼は、今まで女性と付き合ったことがない。ということは、女性と付き合うことで世界にどんな影響を及(およ)ぼすか分からない。彼は悩(なや)んだ。すぐに返事(へんじ)などできない。そこで彼は、しばらく待ってくれと答(こた)えた。ここで、素(そ)っ気(け)なく断(ことわ)ることは彼にはできなかったのだ。それに、その女性のことは彼も嫌(きら)いではなかったから…。
数日後、彼は熟慮(じゅくりょ)を重(かさ)ねて返事をした。「僕(ぼく)と一緒(いっしょ)に世界を救(すく)って下さい」と。
<つぶやき>こんなこと言われちゃっても…。笑い飛(と)ばすような彼女だと、いいですよね。
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