あたしは妄想(もうそう)に取り憑(つ)かれてしまったみたい。いつも頭の中にあの人が現れて…。
あの人っていうのは、地下鉄(ちかてつ)に乗(の)っているときに見かけた人で、素敵(すてき)な人だなって思ってしまったの。あたしの思い描(えが)いていた彼氏(かれし)に瓜(うり)二つ…。こんなことがあるなんて、これは奇跡(きせき)よ。そして、その人…、あたしと同じ会社(かいしゃ)に勤(つと)めてた!
これは、つい最近(さいきん)、分かったことなんだけど…。違(ちが)う部署(ぶしょ)だから、まったく顔を合わせることがなかったの。それ以来(いらい)、あたしの頭の中には妄想の彼が居座(いすわ)ってしまった。日を追(お)うごとに、あたしの妄想はどんどんエスカレートして…。
とうとう…。今、あたしの目の前にあの人が現れた。妄想のはずなのに、何だかとってもリアルに感じてしまうのは、なぜ? あの人が、あたしに話しかけている。まるで、あたしに向かって愛(あい)をささやいているようだ。あたしは、身体(からだ)の力が抜(ぬ)けていく。次の瞬間(しゅんかん)、あたしはあの人に抱(だ)きしめられていた。
あたしが目覚(めざ)めると、そこは病院(びょういん)のベッドの中…。後輩(こうはい)の娘(こ)がそばにいて、心配(しんぱい)そうにあたしを見つめていた。どうやら、あたしは急(きゅう)に倒(たお)れたみたいだ。そばにいた人があたしを抱き止(と)めてくれて、倒れて怪我(けが)をすることはなかったそうだ。抱きしめられたと感じたのは、それだったんだ。
男性が病室に入ってきた。あたしの目は釘付(くぎづ)けになってしまった。あの人だ!?
後輩が言った。「あっ、先輩(せんぱい)。この人ですよ、先輩を抱き止めてくれたのは…」
<つぶやき>妄想が現実(げんじつ)になってしまうのか? この先、どうなるのか興味津々(きょうみしんしん)ですよね。
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