みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0208「オーパーツ」

2018-04-26 19:04:30 | ブログ短編

「見たまえ、この見事(みごと)な壁画(へきが)を」教授(きょうじゅ)は興奮(こうふん)した声で言った。「保存状態(ほぞんじょうたい)も申(もう)し分ない」
 真っ暗な洞窟(どうくつ)の中、みんなのどよめきがこだました。調査(ちょうさ)を始めると、かなりの数の動物(どうぶつ)の壁画が見つかり、中には人の姿(すがた)らしいものも発見(はっけん)された。ほどなくして、洞窟の奥(おく)の方を調べていた隊員(たいいん)が叫(さけ)んだ。
「教授、来てください。文字(もじ)らしいものを見つけました」
 教授たちは転(ころ)びそうになりながら、声のする方へ急いだ。教授がそこで見たものは、細(こま)かな線(せん)がいくつも引かれていて、それは何かの形を示(しめ)す図形(ずけい)にも見えた。
「教授、ここを見てください」隊員は壁(かべ)の一点(いってん)を示して、「これって、絵文字(えもじ)じゃありませんか? あの携帯(けいたい)メールで使う顔文字に似てると思うんですが」
 教授は灯(あかり)を近づけ、食い入るように覗(のぞ)き込む。確(たし)かに笑ってVサインを出している顔に見えてきた。隊員は別の場所(ばしょ)を指(ゆび)さして、「これなんか、いびつですがハートマークじゃ」
「どういうことだ」教授は頭をかかえた。「この時代(じだい)に、こんな図形を書いていたなんて」
 教授はさらに詳(くわ)しく調べ、驚(おどろ)くような仮説(かせつ)を打ち立てた。
「これは何かの盟約(めいやく)かもしれん。文字の全体(ぜんたい)を見ると二つのグループに分かれている。それぞれ書き方が違(ちが)うから、別の人物(じんぶつ)が書いたものだろう。そして、最後(さいご)のサインだ。人の手形(てがた)がそれぞれつけられている。もしこれが解読(かいどく)できたら、歴史(れきし)が変わるかもしれんぞ」
<つぶやき>壁画はその時代を生きた人の証(あか)し。私たちは未来(みらい)に何を残せるのでしょうか。
Copyright(C)2008- Yumenoya All Rights Reserved.文章等の引用と転載は厳禁です。


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 0207「お好み焼き」 | トップ | 0209「生まれる場所」 »

コメントを投稿

ブログ短編」カテゴリの最新記事