夏休み。子供たちもついつい夜更(よふ)かししてしまう。でも、気をつけて下さい。真夜中(まよなか)が近づくにつれて、魔界(まかい)への扉(とびら)が少しずつ開いていくのですから。
「いつまで起(お)きてるの? 早く寝(ね)なさい」ママは子供たちに声をかけた。
でも子供たちはゲームに夢中(むちゅう)で、ママの方を見ようともしなかった。どのくらいたった頃(ころ)だろう。どこからともなく声が聞こえてきた。「こんなところに美味(うま)そうな子供がいるぞ」
子供たちはビックリして部屋(へや)の中を見回(みまわ)した。その時、台所(だいどころ)にいたはずのママがいないことに気がついた。子供たちはママを呼(よ)んでみた。でも、返事(へんじ)が返(かえ)ってこない。
またさっきの声が、「どっちから喰(く)ってやろうか。大きい方か、それとも小さい方か」
子供たちはママを呼びながら部屋を飛(と)び出した。そして、両親の寝室(しんしつ)へ飛び込んだ。だが、そこにママの姿(すがた)はなかった。子供たちはベッドへ上がり、肌掛(はだか)けを頭から被(かぶ)って隠(かく)れる。声はどんどん近づいて来る。「どこに行った? 隠(かく)れてもムダだぞ」
子供たちは震(ふる)える声でささやいた。「ママ、助(たす)けて…」
声は、とうとう耳元(みみもと)で聞こえるくらいまで近づいた。「見つけたぞ。この中だ!」
子供たちは肌掛けごとベッドから飛び出した。その時、ドスンと音がした。子供たちが振(ふ)り向くと、床(ゆか)に落ちた肌掛けの下で何かが動いている。子供たちは叫(さけ)び声を上げて、その場を逃(に)げ出した。
<つぶやき>真夜中はあやかしたちの時間なのです。邪魔(じゃま)しないように早く寝ましょうね。
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