「ねえ、どんな彼を連(つ)れて来ると思う?」心愛(ここあ)はワクワクしながら訊(き)いた。
「そうねぇ、きっと普通(ふつう)なんじゃない」結衣(ゆい)はあまり興味(きょうみ)がなさそうだ。
「でも短大(たんだい)のとき言ってたじゃない。絶対(ぜったい)、美男子(びだんし)で高収入(こうしゅうにゅう)で優(やさ)しい人と結婚(けっこん)するって」
「あのね、そんな人いるわけないでしょ。ちょっと考(かんが)えれば分かることだわ」
「そりゃ、そうだけど。愛子(あいこ)のことだもん、ひょっとしてってこともあるでしょ」
「ないない、絶対(ぜったい)あり得(え)ない。あの子って、口ばっかりなんだから。心愛だって知ってるでしょ。あんないい加減(かげん)で、優柔不断(ゆうじゅうふだん)で…。何で私が、会わなきゃいけないのよ」
「忘(わす)れちゃったの? 卒業(そつぎょう)のとき決(き)めたじゃない、三人で。結婚するときは、みんなでお祝(いわ)いしようって。もう、そんな顔しないで。二人で祝ってあげようよ」
心愛は、結衣に微笑(ほほえ)んで見せた。それを見た結衣は、仕方(しかた)なく口を横(よこ)に伸(の)ばして歯(は)を出して見せた。その顔に、心愛は思わず吹(ふ)き出した。
「私、あなたみたいに笑えないから」結衣はますます不機嫌(ふきげん)になった。
「そんなことないわよ。だって、あたし知ってるもん。結衣の笑顔」
「何で…。私、忘れたわ。そんな昔(むかし)のこと…」
「ねえ、あの彼とは、その後、どうなの?」
「知らないわよ。あんな人のことなんか。私、もう誰(だれ)とも付き合うつもりないから」
<つぶやき>恋することで乙女(おとめ)は奇麗(きれい)になっていくのです。いつまでも、恋(こい)をしましょう。
Copyright(C)2008- Yumenoya All Rights Reserved.文章等の引用と転載は厳禁です。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます