みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0957「焦がれる2」

2020-09-21 18:05:50 | ブログ短編

 結衣(ゆい)と小木(おぎ)君は誰(だれ)もが羨(うらや)む恋人同士(こいびとどうし)。学校(がっこう)ではいつも一緒(いっしょ)に過(す)ごすようになった。吉乃(よしの)はちょっと距離(きょり)をおいて、二人を見守(みまも)っているようだった。でも、休日の前の日には、結衣は吉乃にアドバイスを求(もと)めていた。デートで失敗(しっぱい)はしたくないから――。
 夏休みに入ると、吉乃は自分から結衣と連絡(れんらく)をとるのをやめてしまった。結衣からも何も言ってこなかった。一度だけ、吉乃は二人が仲良(なかよ)く歩いているのを見かけた。
 二学期が始まって、吉乃は驚(おどろ)いた。結衣の様子(ようす)が変わってしまったのだ。顔からは生気(せいき)が消(き)え、塞(ふさ)ぎ込んでいるようだった。吉乃は結衣にどうしたのか訊(き)いてみた。結衣は、
「あのね、あたし、引っ越さなきゃいけなくなって…。あたし、小木君と別れたくない」
「えっ、どうして? そのこと、小木君には話したの?」
 結衣は首(くび)を振(ふ)って、「もう、何でよ。転勤(てんきん)なんて…、パパ一人で行けばいいのに…」
 吉乃は励(はげ)ますように、「大丈夫(だいじょうぶ)よ。会えなくなっても、いつでも連絡とれるじゃない」
「気休(きやす)めはやめて! 彼と会えないのよ。あたし、耐(た)えられない。ムリよ。小木君…、きっとあたしのことなんか忘(わす)れてしまうわ。他に好きな娘(こ)ができるに決(き)まってる。あたしなんかより、ずっときれいで……。ああ、あたし…。もう、死(し)んでしまいたい……」
 結衣は、急に胸(むね)を押(お)さえて倒(たお)れ込んだ。吉乃は彼女の名前を叫(さけ)んだ。結衣は、喘(あえ)ぎながら呟(つぶや)いた。「小木くん…、あたしの……。大好きよ…いつまでも…ずっと……」
<つぶやき>こんなことになるなんて、誰(だれ)も予想(よそう)なんて…。悲恋(ひれん)に終わってしまうのか。
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