人生(じんせい)で起(お)きるすべての出来事(できごと)は偶然(ぐうぜん)のなせる業(わざ)。果(は)たしてそうなのだろうか?
とあるオープンカフェで、どこにでもいそうなおじさんがぼそぼそと囁(ささや)いた。
「このままじゃダメだ。男の方を少し足止(あしど)めしてくれ。このままじゃすれ違(ちが)っちまう」
おじさんが付けているイヤホンから女の声が流れた。「そんなこと急に言われても…」
「何でもいいから、臨機応変(りんきおうへん)に対応(たいおう)しろ。俺(おれ)たちにできないことはないんだ」
すぐ近くで、歩いている男に女性が声をかけた。どうやら道を訊(き)いているようだ。しばらくして、また男が歩き出した。すると、脇道(わきみち)から出て来た女性とぶつかってしまった。
カフェにいたおじさんがまた囁いた。「よし、予定(よてい)どおりだ。俺(おれ)たちの仕事(しごと)はここまでだ。撤収(てっしゅう)してくれ。みんな、ご苦労(くろう)だった。次のミッションまで休養(きゅうよう)してくれ。以上(いじょう)」
すると、道を歩いていた人や、カフェの客(きゃく)などがいっせいにその場を離(はな)れて行った。それと入れ違いに、別の人達か回りから集まってきた。その中の一人の女性。カフェの前を通り過ぎながら囁いた。「みんな、ミッション開始(かいし)よ。ターゲットの情報(じょうほう)を知らせて」
彼女の付けているイヤホンから声が聞こえてきた。「今、男と愛人(あいじん)は本屋(ほんや)の前を通過中(つうかちゅう)。腕(うで)を組んで、まるで恋人同士(どうし)だ。あと、五分でランデブー地点(ちてん)に到着(とうちゃく)予定」
「了解(りょうかい)。こっちも順調(じゅんちょう)よ。尾行中(びこうちゅう)の奥(おく)さんも予定どおり向かってるわ」
<つぶやき>まさか、そんなこと…。偶然だと思ってたことが、そうじゃないのかもね。
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