みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

1404「お迎え」

2023-07-28 17:35:39 | ブログ短編

「生きた証(あか)しを残(のこ)せたか?」彼女の耳元(みみもと)でそんな声が聞こえた。彼女は、「まだだよ」と答(こた)える。それから数年後。また同じ声が聞こえた。彼女は最愛(さいあい)の人と結婚(けっこん)して、子供(こども)も授(さず)かった。家庭円満(かていえんまん)で仕事(しごと)も順調(じゅんちょう)。何の不満(ふまん)もなかったので、「はい」と答えてしまった。
 すると、彼女の目の前にねずみ色のマントに包(つつ)まれた男が現れた。彼女は驚(おどろ)いて、思わず訊(き)いてしまった。「あんた、だれ?」すると男は、「見れば分かるやろ」と。
 彼女はふざけたように答えた。「ああ…。なんだ、ねずみ男(おとこ)か…」
「そや、わてはねずみ男やで…。なんでやねん。これが、ねずみ色だからか? 安直(あんちょく)すぎるやろ。ちゃんと考えろや。どう見たって、死神(しにがみ)やろ」
「し、死神って…。なんで? なんであたしの前に現れたのよ」
「そりゃ、決(き)まってるがな。あんたを迎(むか)えに来たんやで」
「そ、そんなのイヤよ。あたし、死にたくない。まだやりたいこといっぱいあるし、それに子供だって小さいのよ。あたしがいないと…。なんであたしなのよ。他(ほか)にいるでしょ」
「そやなぁ。でもな、これも順番(じゅんばん)なんや。ほな、行こか?」
「えっ、いま? 今なの…。そんなこと急(きゅう)に言われても…。ムリよ。絶対(ぜったい)ムリ」
「でもなぁ、あんた、もう死(し)んでるで…」死神が指差(ゆびさ)した先(さき)に、彼女が倒(たお)れている。周(まわ)りにいた人たちが駆(か)け寄ってきて、救急車(きゅうきゅうしゃ)を呼(よ)んだりと大騒(おおさわ)ぎになっていた。
<つぶやき>誰(だれ)もが経験(けいけん)することなんだけど、死んじゃう時ってこんな感じなのかなぁ?
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