俺(おれ)は旧友(きゅうゆう)と三年ぶりに再会(さいかい)した。でも、どことなく元気(げんき)がない。いつも冗談(じょうだん)ばかり言って周(まわ)りを笑(わら)わせていたのに…。俺は、ちょっと心配(しんぱい)になって強引(ごういん)に飲みに誘(さそ)った。
飲み屋で旧友は腕時計(うでどけい)を見ながらぽつりと言った。「時計を見てると考えてしまうんだ。少しずつ命(いのち)が削(けず)られているんだなって…」
俺は思わず、「バカか? そんなこと考えてどうするんだよ」
「だって…、明日、死(し)ぬかもしれないんだぞ。この先(さき)どうなるか…」
「そういうことはな、定年(ていねん)になってから考えろよ。俺たちまだ二十代なんだぞ。――そういえば、お前、彼女いたよなぁ。羨(うらや)ましいよ。俺なんか…」
「ああ、いたよ。もう会(あ)えないけど…。死んじまったんだ。これから…どうしたら…」
俺は、なぐさめる言葉(ことば)も出なかった。こいつに何があったのか…。それを聞くことさえ躊躇(ちゅうちょ)した。それから数ヶ月後のことだった。またその旧友と再会した。今度の彼は生き生きとして、昔(むかし)の彼に戻(もど)っていた。俺は、彼女のことが吹(ふ)っ切れたんだと思った。
旧友は言った。「彼女が戻ってきてくれたんだよ。僕(ぼく)の前にね」
俺は、彼の言うことが理解(りかい)できなかった。確(たし)か、彼女は亡(な)くなったはず…。彼は続(つづ)けた。
「今はとっても幸(しあわ)せなんだ。来月、結婚(けっこん)するんだよ。案内(あんない)を送(おく)るから披露宴(ひろうえん)には――」
俺は彼の言葉をさえぎって、「おい、彼女…死んだんじゃなかったのか?」
「そうだよ。でも、生き返(かえ)ってくれたんだ。あの、隕石(いんせき)の騒(さわ)ぎがあった夜(よる)にね」
<つぶやき>これは宇宙人(うちゅうじん)の仕業(しわざ)なのか? でも、愛(あい)する人が戻ってくるなんて…いいね。
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