みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0932「盗賊の頭」

2020-08-02 18:00:04 | ブログ短編

 江戸(えど)牛込(うしごめ)辺りの茶店(ちゃみせ)。初老(しょろう)の男が通りを眺(なが)めながら一服(いっぷく)していた。そこへ同心(どうしん)の男がやって来て、茶店の娘(むすめ)に声をかけ、初老の男の傍(そば)に腰(こし)を下ろした。同心は独(ひと)り言のように、
「ああ、今日も暑(あつ)くなりそうだ。ここらでひと雨(あめ)ほしいもんだ」
 初老の男はそれに答(こた)えるように、「そうでございますねぇ。こう暑くては…」
「まったくだ」同心は相(あい)づちを打って、「お前さん、どこから来なすった?」
「私は、尾張(おわり)の商人(あきんど)でございます。江戸へは久(ひさ)しぶりにまいりまして」
「そうかい。それは…。お前さん、知ってるかい。いま、尾張藩(はん)に出入りしているお店(たな)が相次(あいつ)いで盗賊(とうぞく)に襲(おそ)われていることを…」
「そうでございますか…。でも私どもは小商(こあきな)いで、江戸にお店(たな)を持ってはおりませんので」
「そうかい、ならいいが…。で、江戸には商(あきない)で来たのかい?」
「いえいえ、お店(たな)は伜(せがれ)に継(つ)がせまして、私は物見遊山(ものみゆさん)でございますよ」
「それは豪儀(ごうぎ)だね。つかぬことを訊(き)くが、尾張藩で揉(も)めごとがあるとか聞かないかね?」
「さぁ、それは…。藩の内情(ないじょう)のことなど耳(みみ)に入るわけがございません」
 ――同心が茶店(ちゃみせ)を出て行くと、店の奥(おく)から店主(てんしゅ)が出てきて初老の男にささやいた。
「お頭(かしら)、いいんですかい? このまま行かせて…」
「かまわんさ。何もつかんでいないだろ。まさか同心と話しをするとは、おかしなもんだ」
<つぶやき>盗賊たちは、尾張藩を狙(ねら)っているのでしょうか? 彼らの目的(もくてき)は何なのか…。
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