周(まわ)りでくしゃみをしたり鼻(はな)をかんだりしている人が増(ふ)えていた。友達(ともだち)にも何人かいて、その辛(つら)さは何となく分かっていたつもりでいた。私には、花粉症(かふんしょう)なんてずっと他人事(ひとごと)のようにしか思えなかった。だって、全然(ぜんぜん)平気(へいき)だったんだから。ついこの間(あいだ)までは――。
それは突然(とつぜん)やって来た。鼻がムズムズしてきて、くしゃみが止まらない。目もしょぼしょぼして…。友達に話したら、嬉(うれ)しそうな顔をして、
「花粉デビューしたんだ。これで、あなたも私たちのお仲間(なかま)ね。これからは何でも相談(そうだん)して。先輩(せんぱい)として、いろいろアドバイスしてあげる」
「そう…、ありがとう。何か、助(たす)かるわ――」
私は、何か変な感じだった。嬉(うれ)しいような…、悲(かな)しいような…。
別の友達に花粉症になったって話したら、その娘(こ)は心配(しんぱい)そうな顔をして、
「そうなんだ。大変(たいへん)ね。じゃあ、しばらくは誘(さそ)わない方がいいよね」
何でよ。花粉症になったら、遊(あそ)びに出かけちゃいけないの? 私は、何だか仲間はずれにされたような気分(きぶん)。そう言えば、この娘(こ)って花粉症じゃなかったわ。
私はにっこり微笑(ほほえ)んで、その子に言ってやったわ。
「そうね。でも、大丈夫(だいじょうぶ)よ。あなたも、すぐに私たちのお仲間になるんだから」
<つぶやき>日頃(ひごろ)から気をつけた方がいいですよ。今は大丈夫でも、いずれあなたも…。
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